自作ゲームの黒歴史:第三章
ミスリルダンジョンがゲームとして結構上手くいき、ゲーム作りがどんな物か段々と分かってきた第三弾。
第二弾の反省点を踏まえて目指したのは「思わずやってみたくなる切り口」。
元々、「アナログゲームに興味の無い人にも興味を持って貰いたい」というのがあったので、今回は「勉強になるボードゲーム」を目指した。
第三弾:ボードゲーム「256」
このゲームに関してはあれこれこねくり回して、どれが原型でどれが最終形かはっきりしないんだけど・・・
ごく初期のもの
修正版(この時はパソコンでデザインし、印刷)
最終バージョン(ここで諦めた)
色々修正は掛けたがコンセプトは一貫して「論理演算を学べるアナログゲーム」。
「子供がゲームで遊んでいるうちに、自然に論理演算が分かり、プログラムに親しめるようになる」と聞けば、世のお父さんはちょっと興味が出ませんか?
そんな「子をダシに興味を引かせる」といういやらしい狙いで考えたこのゲーム。
結論から言うと大失敗でした。
良かったところ
コンセプトありき、ということでインパクトは良かった。
実際この手のゲームに興味の無い友人(電気回路設計が趣味)にこのコンセプトを話したところ「やってみたい!」と乗り気になってくれていた。
「電話越しに5秒で伝わるか」
コンセプトについての大事な制約で、それをこのゲームはクリアしていた、と思う。
悪かったところ
わかりやすさは大事
まず論理回路をよく知らない人の感想は一様に「よく分からない」「難しい」。
うちの娘?ルールの説明途中で泣いて逃げ出した。
「難しい論理回路を楽しく勉強」というつもりだったが、全然分かりやすくなかった。「論理回路とは」という原理原則に凝り固まって、それをデフォルメできていなかったことが一番の反省点。
前作であれだけ「ゲームは楽しむことが一番」と言っておきながら、なまじ自分の分かる領域でゲームを作ると「いや、でも論理回路とはこういう物だから」と真っ正直に作ってしまった。ゲーム作りに限らず、自分の知識や経験は、新しい領域に行くときには邪魔をするモンだと実感した。
評判の悪かった「論理演算」カードとチップ
例えば「0/1」ではなく「赤/青」などでも良い。「NOR/NAND」なんかは何か特殊なアイテム名や、魔法にしてもいい。そういったアイデアを盛り込まず、ガチガチの論理演算を並べただけの作りは良くなかった。
作業はシンプルに
論理演算をゲームにして面白いところは、コード一発でデータがパタパタと一気にひっくり返るところ。
しかしこれが「爽快感」ではなく、「作業量の増加」という感覚になっていた。
「論理演算だからこの行とこの行の演算結果をここに入れて・・・」
という説明でどれだけみんなが苦労して、不満を言われたことか。
たくさんのチップを動かしながらそれに不満を抱かせず、爽快感を演出する。やっぱり帰ってくるところはオーソドックスな名作ゲームになる。本当に「オセロ」は素晴らしい。
まとめ
反省すべき点の多いゲームだったが、とにかく「自分が分かるからって人も分かると思うな」ということ。
過去何年もそれを訓練してきた筈だったのに、いざ自分の好きな領域でゲームを作ると全く見えていない。反省、反省。
専門家が作っても、プロが作っても教育用ゲームは得てして面白くないが、それはどれだけ「抽象化」が難しいかという事だと思う。
抽象化しなければゲームとして面白くないし、抽象化しすぎると伝えたいことが伝わらなくなる。例えば論理演算の挙動を「分かりやすくしよう」と改変してしまえば、結局このゲームで伝えたいことが伝わらなくなる。
今の時代に作るアナログゲームのコンセプト
このゲームを諦めた一番の理由は、結局デジタルの世界の論理演算はデジタルのゲームで教える方が良い。そう思ったからだ。
アナログゲームはプログラムの知識が無くても作れる。
しかしそれだけの理由でアナログゲームを作るのなら、存在価値は無いと思う。
PS4やXbox、Nintendo 3DSやPS Vitaだけでなく、iPhoneもAndroidも、ゲームは身の回りに溢れている。そんなゲームと、アナログゲームでプレイヤーが変わるわけでは無い。
「いや、あっちは何億、何十億も掛けたしっかりしたゲームだから別物でしょう」
そんな言い訳はプレイヤーには通用しない。個人が家でちょこちょこ作るゲームも、何十億かけた大作ゲームも、プレイヤーからすれば同じ「ゲーム」で、作る側からすれば競合になる。
いや、もっと言えばうちの娘が妖怪ウォッチを見るのか、ジャンプを読むのか、スマホでAndry Birdsをやるのか、自作ゲームで遊ぶのか。娘にとってはどれもが同じ5分であり、30分だ。この飽きやすい小学一年生の時間を奪う。それが親ゲームデザイナーとしての成功だ。
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だからコンセプトを考えたら、そのフォーマットが適切かを考えなければいけない。
このゲームのコンセプトは、アナログでやるべき内容では無い。
それがこのゲームの着地点で、この失敗からゲームのデザイン段階で「アナログならではの良さを生かせているか」を考えるようになった。