ボードゲームはどう作るのか、自分なりに考えた。
ゲームを作ろうとして思ったのは、「ボードゲームの作り方」の資料が見付からなかったこと(探せばあるのかもしれないけど、見付からなかった)。
そりゃボードゲーム自体がマイナーな趣味なのに、輪を掛けてマイナーな「ゲーム作り」の資料なんか無いか。当然と言えば当然。
いくつかビデオゲームの本は眺めたけど、ゲームデザインやレベリングについて書かれたものより「3Dの作り方・動かし方」「シューティングにおける当たり判定」「データベースの処理」とか、そんなの方が多かった。3Dがモリモリ動く事は大事でも、ゲームの本質じゃないと思うんだけどなぁ。既存のカテゴリありきで考えるのは、クリエイターってよりデザイナーじゃねぇかと思うんだが。
そんな中で多少なりとも参考になったのはこちら。回顧録の部分も多いので、受け取る側の思考力が必要な本だとは思う。2を作るそうなので楽しみにしてます。
ゲームデザイン脳 ―桝田省治の発想とワザ― (ThinkMap)
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そうして手探りで始めざるを得なかったゲーム作り。自分がゲーム作りを語れるほど詳しいとはとても思わないけど、一から考えた軌跡は誰かにとって役に立つかも知れない。そう思って書き記してみる。
最もシンプルなゲーム
古今東西、最初のゲームは「双六」だと言われている。
それこそ石器時代からサイコロは見つかっているわけで、それにどこまでゲーム性が合ったかはともかく、古くからサイコロ遊び(=占い・ギャンブル)が行われていたのは間違いない。
ギャンブルも色々あるけれど、すべからく全てのギャンブルは完全に運任せでなければいけない。(でなければ胴元の気持ち一つでいくらでも巻き上げられることになる)
逆に将棋などは完全に相手の情報の分かっている「完全情報ゲーム」と言われる。こちらには運の要素はなく、勝敗は純粋にプレイヤーの実力に依存する。
「運」か、「実力」か。
ほとんどのボードゲームはどちらでもない。この中間に含まれる。
もちろん一部ハードなゲームはほぼ「実力」だけの勝負になっているし、子供向けには完全に「運」のゲームもある。
総じて「運」に寄るほどパーティーの場でワイワイと短時間で遊ぶゲームに、「実力」に寄るほど長時間、ゲーム好きがじっくりと考えて楽しむゲームになる。
自分の考えるゲームはどの辺に当たるか。まずはそのコンセプトとターゲットから「運」の配合を考える必要がある。例えばカードを引くにしても、「一枚引いてアクションする」と「五枚引いて一枚アクションし、残りを破棄する」では後者の方が運の要素は低い。またカードの種類や枚数で運の要素は増減できる。
運というと最初にサイコロが思い浮かぶけど、1/6という確率が必ずしも使い勝手がよいとは限らない。サイコロなら1/2や1/3でも調整できるし、10面ダイスや20面ダイスでもっと低い確率も作れるけど、カードの方が微妙な調整ができるということはゲーム作りで頭に入れておいて良いと思う。
二律背反ともどかしさ
ビデオゲームは良くできていて、ボタンを押すタイミングを「障害」として組み上げることでゲームが成立できる。シューティングや格闘はそれをとことん極めた物だが、アクションだってパズルだって結局は同じだ。
その意味では二すくみ、三すくみの読み合いと、それを繰り出すタイミングが沢山のテレビゲームの根幹を占めているのは昔から変わらない。その三すくみの勝負をするための手続きが何十年を掛けて進化しているだけで、暴言を吐いてしまえば根幹はアーバンチャンピオンから変わらないとも言える。(いや、名作ですよ。アーバンチャンピオン)
香港じゃ違法なコピーゲームが昔はたくさんあったけど、あれなんかゲームの処理クロックを変えるだけで別ゲームとして売り出していた。そうしたタイミングだけでゲームとして成り立つのはビデオゲームならではと言える。
(もちろん、ブロック積み上げとか、カード早出しとか、アナログゲームでもそういったタイミング重視のゲームはある)
ただ、ほとんどのボードゲームはタイミングをそこまで追求しない。
考えて、悩むことを楽しむものの方が、ボードゲームには圧倒的に多い。
そんなボードゲームにおけるデザインの基本は「二律背反」だと思う。
ギャンブルと同じで、リスクの高いアクションと低いアクションを用意すること。リスクの高いアクションとは「正の効果と負の効果がともに大きい」あるいは、「低確率で大きな効用が得られる」というもの。低リスクはその逆。
「ここで大きく稼ぎたいけど、相手も狙っているかも」
「ここは守りに入っておきたいけど、その間に差を付けられるかも」
そう悩むところがあるか?それがゲームを「プレイしている」という感覚を持てるかの基準だと思う。そうでなければプレイは単純な作業になる。
単純作業はゲームの一部で発生することもある。ゲームの大勢が決してしまえば残りは消化試合となり単純作業になる。ゲームデザインとしては最後まで気を抜かせず、でも途中もずっとハラハラする造りが求められる。
この点は桃鉄をイメージすると分かりやすい。通常ならゲームが進むほど逆転が難しい双六遊びを、「ボンビー」「キングボンビー」を入れることで最後まで緊張感を持たせている。
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モノポリーなんかは逆の考え方で、大勢が決する頃には負けている側は破産してしまう。逆に生き残ってさえいればある程度逆転の目はある。さっさと振り分けることで、プレイヤーが緊張感を保てるようにしているのだろう。
勝利条件
もう一つ、ボードゲームで重要なのは「どうすれば勝ちか」。
これもゲーム性を左右する重要なファクターになる。
ゲームはできるだけシンプルであることが望ましいから、ゲームで使うアイテム(分かりやすいところではお金)を最終目的にするという方法がある。
この辺、ゲームの途中アクションと最終の目的が合致している必要があるが、もう一つ、「ゲーム中で使うお金」と「クリア条件」を分けるという手もある。
これを非常にシンプルに、上手に実現したのが「ドミニオン」だと思う。
ドミニオンでは「お金」と「領土」という二つの価値がある。
簡単に言うと「お金」はプレイ中に重要だが、ゲーム終了時の精算では一切カウントしない。逆に「領土」はプレイ中は一切役に立たないが、精算時にはこちらしかカウントしない。
ゲームを有利に進めるお金と、勝つために必要な領土。
ゲーム中はお金やアイテムを集める動きから、どこかで領土を集める動きに切り替えなければいけない。非常にシンプルで、美しい二律背反だと思う。
今日のまとめ
- 運と実力
- 二律背反
- 勝利条件
これらがきちんとコンセプトにあっており、ゲーム性を作れているか。
自分がゲーム作りをする際にはまずこれを確認するようにしている。
ゲームを作ってみたい人(そんな人がそもそも何人これを読んで貰っているかも甚だ疑問ではあるけれど)に、こんな文章が少しは参考になれるだろうか。