子供向けが子供専用なんて、誰が言った(家族向け、ボードゲーム):五歳編
こちらからの続きです:子供向けが子供専用なんて、誰が言った(家族向け、ボードゲーム):三歳編 - ペンとサイコロ -pen and dice-
五歳からのボードゲーム
五歳になると子供も「読み」ができるようになる、というのが子育て(に合わせてのボードゲーム訓練)で実感したこと。
この辺からタマに子供が勝つようになり、ゲームが俄然面白くなってくる。
「発想」と「連想」
ここで取り上げるのは「うちの娘が本気で勝利を収めたゲーム」。
なんでそれを取り上げるかというと、五歳~小学生の子供を持つ家で、もし親子共にこのゲームに興味を持つことがあれば、親子とも本気で遊ぶことができると思うから。
おそらくそこに、適度に子供を勝たせる「接待プレイ」は必要ない。むしろ悪影響。本気でゲームをしなければ、これらのゲームの「読み」は通用しなくなる。
Dixit
「2010年ドイツ年間ゲーム大賞を受賞し、世界中に“コミュニケーション・ボードゲーム”のブームを 巻き起こした」なんて枕詞が付くほどの名作ゲーム。
今の「ボードゲームはコミュニケーションに良い云々」なんて話もこのゲーム辺りがその端緒だったんじゃなかろうか。
ゲーム内容は口で説明すると難しいけど、やれば分かる。
写真ではこんな感じ。
「Dixit」のゲーム風景(イメージ)
これは標準タイプを5人でやっているときのイメージ。
巨大な箱を歩き回るウサギが得点です。ってか箱はこの得点板としてのみ機能。なのにでかい!なんとかならんのか、と思う。
ちなみに人数が多い場合は「Dixit Odessey」という拡張版もある。ただこちらはゲームシステムが変わり、「Dixit」の名前は付くけど全く別ゲーム。個人的には標準タイプの方が好き。
ディクシット:オデッセィ(DiXit ODYSSEY) 多言語版
- 出版社/メーカー: ホビージャパン
- 発売日: 2011/08/26
- メディア: おもちゃ&ホビー
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ゲームの流れはこんな感じ。
- 「語り部(親)」がお題を出す
- 全員がお題に沿ったカードを裏向けに出して、シャッフルする。
- カードの出元を伏せて表に向け、「どれがお題に沿っているか」を全員が投票する(自分の出したカードには投票できない)
- 自分の出したカードに付いた投票数が、各自の得点になる
ただし、「4」において、全員が「語り部(親)」に投票すると、親のチョンボでペナルティになる。親は「たくさん投票して欲しいけど、全員はダメ」というジレンマの中でお題を出すことになる。こんな説明で分かるかなぁ・・・
ということでゲームに使うのはほぼカードだけなんだけど、そのカードはどれも独創的で、しかもでかい!
大きさ比較。他に例を見ないカードの大きさ。
最初だけ子供は「語り部(親)」をパスするルールで参加させたけど、親をさせてみるとそれはそれは絶妙な、見事なお題を出して最多得点をかっ攫って行きやがった!という思い出深い作品。最終順位も5人中2位でした。
それでも「一番じゃない!」と大泣きしたのは子供相手でのお約束。
このゲームで子供が高得点を出したとき、「子供も本気で遊べるし、その方が楽しいな」と実感した。Dixitには卑怯なテクニックがあって、親のお題に対して、皆が結託して「お題と違うカード」を出すと、親のカードをあぶり出すことができる。子供が参加しているからと下手な接待プレイをすると、図らずもこんな状況が生まれかねない。だからDixitは、参加するみんなが本気にならないと、そもそもゲームが成立しないようにできている。接待も、手抜きもできないのだ。この辺が「コミュニケーションゲーム」の本領かと思う。
ただゲームに慣れるまでは、「見学」→「『子』のみの参加」→「普通に参加」という手順を踏ませる必要はある。ゲームを口で説明するのは難しいので、ゲームを見て何となく理解させるのが一番の近道だからだ。そういう「説明で理解できない」というストレスを与えてしまうと、子供はゲーム自体をいやがって参加してくれないし、ゲーム自体に拒否反応を示すようになってしまう。
そして「語り部(親)」になった際には、お題が不適切でも何回かは見守ってやる必要がある。この辺は接待プレイ、というより教育の一環と思って貰えれば。実際、このゲームの親は大人でも結構難しい。
Dixitの親が難しいのは、「曖昧な」お題を出す必要があるから。例えば「ユニコーン」と言うとカードはかなり絞られてしまうけど、「動物」と言えば熊も犬も猫も含むことができる。でも、何人かは自分のカードに投票させたい。じゃ、「元気な動物」だとどうだ? こんな感じでお題を自分の中で考えていく。この辺、抽象化と具体化のバランス、センスが問われる。ルールは単純でも、奥は深い。
ただ、よく考えれば子供はそれを自然にやってるんだよな。絵から物語を想像するのも、それを曖昧に説明するのも。子供はいつも「発想」してるので、あとはそれを「具体化」するレベルだけ調整すればいい。いつもは怒られる「きちんと説明できないこと」が、このゲームにおいてはメリットになる。その辺のちょっとした「非日常性」も、やってて面白いし、子供がどう考えているかを理解する手がかりにもなる。やってみて分かったが、そういう意味でもDixitは非常に子供向き。
でも最近は娘は「二人Dixit」という変則ルールにハマって、「普通のDixitはやり方忘れた!」と言って遊んでくれなくなったので、父ちゃんちょっと寂しい。
ちなみにこの二人Dixit、公式ルールにある物ではなく、「三人~のDixitを、二人でもできるルールはありませんか?」と質問したところ、作者が掲示板で回答してくれたという半公式(?)ルール。(原文はこちら→2 player co-op Dixit variant | Dixit | BoardGameGeek)
- 手札を配り、一人が「お題」を出す。
- 二人ともカードを1枚ずつ裏向きに出す
- 「山」からカードを「4枚」追加する
- 計6枚のカードをシャッフルし、表に向ける。
- 二人とも、「相手の出したカード」を当てる。
- 両方正解→正解コマを進める。それ以外→不正解コマを進める
こうして「正解コマ」が進めばOK。
何が良いって二人で協力して進めるので、やった二人の達成感が高いこと。仲良くなりたい相手とやるのがお勧め。合コン、というよりデート向けのゲームという印象。(ただし全く二人の意見が合わず険悪になっても、当方では責任を負いかねます)
エセ芸術家ニューヨークへ行く
もう一点。こちらは親子、というより家族親族一同で遊ぶゲーム。
「親」「芸術家」「エセ芸術家」という3つの役割が必要なので、プレイ人数5人以上というちょっと人を集めるのが大変なゲーム。
ただ、ゲームするのは本当に子供からおじいちゃん、おばあちゃんまでOKなので、帰省したときとか、 とにかく人数の多いときにお勧め。
ゲーム結果はこんな「絵」になる。
ゲームは親の出したお題を、皆が「一筆書き」で書いていく、というもの。
一筆書きのペンが皆違う色なので、「誰がこの線を書いたか」は皆が分かるようになっているのがポイント。(とはいえ似た色もあるので、厳密にはMAX人数でのゲームは難しい)
ただし、絵を書いている「芸術家」のうち一人は「エセ芸術家」で、今書いている「お題」を知らない。全員が二周書くと絵は完成となる。絵が完成したら、それを見て、「誰がエセ芸術家か?」を皆で指さして当てる。
- 指さした人が一番多かった人が「芸術家」→外れ:「エセ芸術家」の勝ち
- 指さした人が一番多かった人が「エセ芸術家」→正解:「芸術家」の勝ち
エセ芸術家が見つかってしまった場合でも、最後に一発逆転がある。「お題」が実は何だったかを当てれば「エセ芸術家」の勝ちだ。
だから芸術家達は、「お題」が何かを知りながら、それを悟られないように、エセ芸術家を炙り出すように絵を描く必要がある。そうすると必然的に訳の分からない絵が描かれていく。これを楽しむのがこのゲームのポイント。
本当はもう少し細かいルールもあるんだけど、きちんと得点を計算して順位づけるより、みんなでワイワイやるパーティゲームとして遊ぶ方が、このゲームは面白いと思う。
で、このゲームで娘が勝った結果がこの絵。
テーマ:食べ物、正解:パフェ、エセ芸術家:橙
テーマは「食べ物」。テーマは最初に全員に公開されて、これがエセ芸術家にとってのヒントになる。これに対して正解は「パフェ」。ここで娘が最初に迷い無く書いたのが「スプーン」。
本人は「食べ物だから食器を書けば間違いない」と考えたそうで、それに対し皆は「パフェだからスプーンだよね」と完全にスルー。
どう考えてもパフェを書いていない緑(うちの父親)が「エセ芸術家だろう」と皆が判断し、勝手に正解欄に「緑」を書こうとしたところ、本人が「オレじゃない」と抗議。
そこで皆を見回したら、「してやったり」とこれ以上ない笑顔の娘がいた。
あの時の「やれらた!」という全員の顔も、娘の笑顔も、それは良く覚えてる。それぐらい印象的だった。
そしてこのゲーム、こうして「棋譜」としての絵が残るのも面白いポイント。
ゲーム性として興味深いのは、絵が上手い人が強いわけではないこと。むしろ絵が絶望的に下手なら、ぐちゃぐちゃと誤魔化しても、「まぁ、あいつの画力だし・・・」と納得されてしまうこともある。実は絵の巧拙よりも、何を表現するかという発想力の方が大事になる。ここもDixitに似ているのかもしれない。
唯一の欠点は、参加人数が必要なこと。システム上仕方ないとはいえ、5人をちょっと集めるのはなかなか難しい。
今回のゲームはガチンコで親子対決したところで普通に楽しめるので、小学校前後の子供のいる家庭、特に子供が何人かいるならお勧め。
もちろん、人生ゲームが好きなら人生ゲームでもいいし、オセロやチェスもそろそろできる年齢になっている。要は親が好きな物を楽しんでやれば良いのだと思う。
また、「子供が勝てるゲーム」「大人が本気で遊べるゲーム」として二つを紹介したが、「負けてもみんな楽しめるゲーム」なら選択肢は更に広がる。
例えばMeke'n'Break。
簡単に言えば「アクション積み木」。
ゲームは単純で、めくったカードの通りに積み木を組むだけ。
上のカードの通りに積み木を組む。タイマーが焦りを誘う。
やたらとでかい音のタイマーが、プレイヤーの焦りを誘ってくれる。
これなんか、普通にやれば大人が勝てるが、「積み木」「タイマー」というギミックが面白いので、負けようが何だろうが、子供は楽しんで遊んでくれる。
前にも言ったとおり、「子供からおじいちゃんまで」が同列に遊べればいいのだから、その手段はいくらでもある。
各家庭なりの楽しみ方を考えて、探して、見つければ、親子の遊ぶ時間も増えていいと思う。とりあえず今回紹介した3つのゲームなら、どれも名作として評価も高いので、大きく外れることはないと思う。