ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

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精神疾患におすすめの一曲

沈んだ気分の時には沈んだ曲を聴くと、共感して落ち着くことができる。
だから失恋したときには、自分の気持ちと同じ心境をうたった、失恋の曲を聴くのが良いと。
何で読んだのか忘れたけど、そういうもんらしい。
逆に沈んだ気分の時に、無理に明るい曲を聴いて盛り上げるのは効果的ではないと。


で、自分の話。
先日、運転中に流れた歌を聴いて、思わず号泣して運転が大変だった。
それが、馬場俊秀さんの「スーパーオーディナリー」という曲。

馬場俊英EP3~弱い虫

馬場俊英EP3~弱い虫

いつも聞いているラジオ局で月間ヘビーローテーションだったそうで、
この曲を選んだラジオ局のセンスも好きだわ。
・リンク → FM COCOLO
というか、こんな良い曲がカップリング?すごいな。


いつもは好きな歌手や曲をブログで取り上げることはないけれど、
珍しく今回は曲の紹介。
なぜなら、この曲が精神疾患の患者・家族に共感できる曲」だと思ったから。
失恋した時には失恋の曲、嬉しいときには楽しい曲を聴くのなら、
精神疾患の患者・家族にはその心境を歌った曲が良くないか?
口で言うとなかなか伝わらないことも、詩や歌なら通じることもあるだろうし。


鬱病などの精神疾患では、「褒めること」「約束を作ること」が大事だし、良いと前にも書いた。
でも、日常生活の中で「褒める」「先の約束を入れる」というのは慣れないと難しい。
症状が悪いと「あれもできない」「これもできなかった」とどうしても後ろ向きになる。
これは本人だけでなくて、家族もそう。
褒めよう褒めようとしても、「なんでこんなことができてないの?」と思ってしまうし、
思わず言ってしまう。
うちも結構そうだった。

まずは「自己否定」を「否定」する

鬱をはじめとする精神疾患の多くでは、
「なぜそうなったのか分からない」「思った通りにできない」
ということから患者本人が強い自己否定にかかることが多い。
だから、話を聞いて貰うためには、まず患者の自己否定を打ち消さなければいけない。

Worried - 62/365 / [ Roberto Bouza ]


「鬱の人には『頑張って』って言っちゃいけないんだよね」
ぐらいは知識として知っている人が多いが、実際には
「どう話をして良いか分からない」「どこまで言っていいか分からない」
ともよく言われる。
この曲では最初にこの自己否定を打ち壊す所から入る。
象徴的なのはこの一行
「『私には何もない』って 君は言うけれど それは違うよ」
これ、うちの嫁もよく言う。
「私はダメなんだ」「自分なんかいない方が良い」「ごめんなさい」
こういった自己否定の言葉を打ち消す。
単に打ち消すわけではなく、「なぜ違うのか」をしっかりと説明する。


歌詞の一番は延々とこの説明をしている。
この人はカウンセラーになっても、かなり優秀だと思う。

褒める

いざ話ができる状態になれば、相手を褒めてあげるのはとても大切。
でも「褒める」と言っても何を褒めたらいいの?
これは精神疾患になった周囲の人たちが凄く困るところだと思う。
毎日動けなかったり、苦しくてのたうち回っている患者に対して、
「大丈夫?」と声をかけるので精一杯なのに、何を褒めたらいいの?


これに対しても、この曲では何度も何度も褒めている。
今まで何十年と生きてきたこと、その間に色々な人と関わってきた
それ自体がすごいんだと、しつこいぐらいに褒める。
これも象徴的なのはこの一節だと思う。
「そのままで すごい人なんだよ」
これを、何度も、言い続けることが「褒める」ことだと思う。


例えば「今日は調子が良くて、自分で買い物に行って夕食を作れたし、家事もできた」

Cooking Green Curry / lejoe

鬱で動くこともできない状態からすれば、これはすごいことだ。
でも、安易に「これができたから凄い」とだけ言ってしまうと、
それができなかった日には「ああ、今日もダメな日だった」と落ち込んでしまう。
(思考がマイナスに向かっているので、「今日は」ではなく「今日も」と考えがち)
だから、「できたことは凄いけど、できなくたって良いんだよ」と逃げ道を用意してあげる。
この曲ではむしろその「日常で凄い」という部分だけを強調している。
これも素晴らしいことだと思う。
日常 1 (角川コミックス・エース 181-1)
このマンガ、タイトルは「日常」だけど、超非日常なギャグ漫画。
「こんな非日常な日々が、彼らにとっての『日常』なんです」
というのがおそらくタイトルの意味なんだろうけど、
同じように一人一人の日常の風景は違うし、ある人から見れば自分の日常は
十分に特異で、凄いかもしれない。そういうこと。
ちなみにマンガはスゲー面白いです。

予定を入れる

「予定を入れる」というと、「ゴールデンウィークに、グアムに行こう」といった「楽しいお出かけ」と感じがち。

Calender / i_yudai

でも体調が悪ければ、飛行機での移動が厳しいかもしれないし、なかなか長期の予定が立てづらい。
予定や約束には、「楽しいことがある」という「希望」と、
「約束や予定を守れた」という「達成感」という二つの側面がある。
だから、予定は大きくなくて良い。
日常の、友達と会うとか、出かけるとか、そんな予定を積み重ねてたくさんこなせればいい。


この曲のサビではこれをなんども繰り返す。
「夕飯は何にしよう 日曜日はどこに行こう」
当たり前の事を言っているが、これってすごく大事。
今夜どうするか、週末はどうするか、
そんな予定を繰り返して、予定を守れれば「できた良かったね」と確認する。

曲の解釈と紹介

曲の解釈なんて人それぞれだし、そもそもこの曲が
本当に精神疾患をうたったものかは知らない。
(曲名「スーパーオーディナリー」が造語だってのは聞いた)
でも、とにかく精神疾患の患者本人(嫁)とその家族(自分)が感動して、
精神疾患の状況を良く描けていると感じたんだから、
その一解釈として、この曲の一ファンとして、一精神疾患の家族として書かせていただいた。


ちなみに公式サイトではサビの一部分を試聴できる。
・リンク → EP3〜弱い虫 - 馬場俊英 オフィシャルサイト
でも、一部を聞いても良さが分からないので、是非一曲聴くことをオススメする。

曲をブログで紹介することについて

最後に、今回は曲を紹介するのに歌詞を引用したが、これについては色々議論があるらしい。
著作権法的にはこう。
参考

著作権法第32条1項⇒「公表された著作物は、引用して利用することができる。
この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、
かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。 」

リンク → フェアユース - Wikipedia


法律だけ読むと引用には何も問題ない気がするけど、著作権料を請求される例があるらしい。
そういや漫画でも歌詞を引用するときには許諾申請出して使用料払ってるなぁ。
このブログは全く営利目的ではないけど、その辺どうなんでしょうね。
(むしろ はてな にお金を払っている状態)
紹介されればそれが広告にもなるんだから、個人的にはブログでの引用は積極的に勧めるべきだと思うけど、
そこは著作権者の認識次第。
OKという意見とNGという意見があり判断が付かなかったので、とりあえずできる限り歌詞の引用は少なくしました。
ただ全く歌詞を引用しなければ良さが伝わらないので、最低限の引用をせざるを得なかったというところ。
問題ありましたらご指摘ください。