ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

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太陽が眩しければ殺人が増えるという科学的根拠について

ムルソーは殺人の理由を「太陽が眩しかったから」と答えた。(カミュ「異邦人」)
ていうかタイトルに意味はありません。
実際に太陽活動が活発になったら殺人が増えるのかは分からないが、
「太陽活動が減ると寒冷期になり、世界で戦争が起こる」という説がある。
冒頭でこの説を取り上げて戦国時代を描いた、この作品のおかげで、この説の知名度も上がった気がする。

センゴク(1) (ヤングマガジンコミックス)

センゴク(1) (ヤングマガジンコミックス)

太陽に元気がなくなると、寒くなる

太陽の活発さは、太陽表面の黒点数で分かる。

Solscape: Sun, H-Alpha / Carla216

黒点は周囲より温度の低い領域で、低いと言っても4000℃程度ある。
(通常の太陽表面温度は6000℃程度)
温度が低いエリアが増えると活発、というのは何とも逆説的だが、とにかくこの数で活発さが確認できる。
(この辺、解説は難しいので今回は省略)


この黒点の数は実際にはめまぐるしく変化する。
従来は「黒点の数は11年周期で増減する」とされていたが、その周期に幅があることが分かってきた。
ではこの黒点が長期的に無くなったら?
過去にはそんなこともあったらしい。
そんな昔のことじゃない。たかだか300年前
1650〜1715年頃には黒点が長く消失していたことが分かっている。

Sunspot numbers since 1610 / thebadastronomer

この時期はマウンダー極小期といわれ、
テムズ川が氷結する」「飢饉が発生(元禄飢饉・1691年〜)」などの記録がある。

Frost Fair on the frozen Thames / Ben Sutherland

フィンランドはこの時期に人口の1/3が亡くなったとか。
ちなみに中国では北の満州族が明朝を倒したのが1644年清朝成立)。
北の部族が南下した理由が寒冷化にあるのでは、という意見もあるらしい。
とにかく、この時期、地球は寒かった。

ちょっと科学のお勉強

ではなぜ太陽の黒点が減ると寒冷化するのか?
とりあえず分かっているのは黒点が減っても太陽が暗くなるわけじゃない」ということ。
「太陽が活発でなければ寒冷化する」というと太陽が暗くなるイメージだが、
なにも1650年当時は今より暗かったわけじゃないらしい。
ただし紫外線の量は減るらしい。これはそのまま大気の温度に影響するが、
高層圏の大気を暖めるので、気温との関連性はまだ分かっていないとのこと。


黒点が表している太陽の活発さは、明るさではなく「磁力」のこと。

Sunspot Loops in Ultraviolet / NASA Goddard Photo and Video

この辺また説明すると長くなるが、太陽の磁力はそのダイナミックな動きによって生じている。
このため、一定の位置と強さで磁力線が出ているわけではなく、複雑に変動し続けることで磁力を保っている。
この磁力線が時々こんがらがって、リセットするような動きをする。
これが極小期の黒点の消失になる。


面白いのはそれによる寒冷化の理由。
磁力線は宇宙からの宇宙線(主には陽子線)を防ぐ「盾」の役目をしている。

NASA Sun Earth / NASA Goddard Photo and Video

黒点の極小期にはこの「盾」がなくなるので宇宙線の照射量が増大する。
そして、雲が増えることで日照量が減少し、寒冷化する・・・・らしい。

何かが起きているみたいだが、何が起きているか分からない。それが「科学的」見解

とりあえず今、分かっているのは「11年周期の筈の黒点の周期が延びている」こと、
「最近『100年に一度の異常気象』が世界各地で起きている」ということ。
科学は色々なことが分かっているように見えるが、意外と基本的なことですら分かっていない。
太陽の黒点だってそう。
黒点の観察はガリレオ・ガリレイの1613年の著作には既に記載があるが、
太陽の極(南極・北極)の黒点の状況が観察されたのは2007年が始めて。

Galileo's Original Moon Drawings / Rennett Stowe

※ガリレオの月のスケッチ。太陽についてもスケッチがあり、黒点についても記述がある。


太陽黒点の周期が、現在通常より長いのは事実だが、これがタダの揺らぎで、また元に戻るのか
このまま極小期に向かっているのかは、現段階では断定できないとのこと。
「一周期(11〜13年)経てばわかる」とは国立天文台の常田教授の談。
「11年は天文学事象にとっては短い時間だ」だそうです。いや、まぁそうなんだけど。
極小期に寒冷化するのは間違いなさそうだが、その相関も100%説明できていない。
温暖化が進んでいる今の状況で、極小期で寒冷化が発生したとき、
最終的に地球は寒冷化するか、温暖化するかは人により意見が異なる。
(どちらにせよ「寒冷化VS温暖化」で相殺できるような単純な物ではないが)


宇宙線が増えると雲が増えて寒冷化する」というのもその理由はよく分かっていない。
過去のデータを見るとそうなっているだけで、その理由はいくつか案が出されているが
解明されていない。

これからは気象がアツい!かもしれない。

今回の元ネタは今月の日経サイエンスの特集から。

もう、タイトルからして「太陽異変」


状況証拠の積み重ねでどう見たって間違いなさそうなのに、科学的に証明されていないことはたくさんある。
特に気象科学は、身近なのに気軽に実験が出来ないためか、意外に分かっていないことが多い。
雲が気象に与える影響とか、おおざっぱには分かってきたが細かいところはまだまだこれかららしい。
新しい理論を証明する一番優れた方法は、これから観察されるであろう現象の「予言」。
ニュートンで言えばピサの斜塔の落下実験(大小二つの鉛玉の落下実験で、重さと落下速度に相関がないことを証明)、
アインシュタインなら皆既日食時の恒星位置のズレ(重力で星の位置がずれて見えることを証明)。


フロンによるオゾン層の破壊だって、オゾンホールが出来るというレベルになって始めて規制が始まったわけで
(オゾンホール発生が1980年代初め、フロン規制の開始が1989年)
温暖化温暖化言ってる隣で、もっととんでもない変化が太陽に起こっているのなら、
10年後には技術トレンドはまたエコとは全く違う物になっているかもしれない。
ちなみに参考までに、小氷期はどれぐらい寒かったのか。
有名な桶狭間の合戦は永禄3年5月19日(1560年6月12日)の出来事だが、その一級資料『信長公記』には
「俄に急雨、石氷を投げ打つように敵の輔(つら)に打付くる」とある。
「石氷」って、「雹」

Hail / TomFrost

たとえ話なのか、本当に雹が降ったのか。
事実なら小氷期テムズ川が凍る寒さとは、日本では梅雨時でも雹が降るぐらいの寒さということ。
これがたかだか300年前。
決して歴史の流れから言えば特異な現象ではない。
科学技術にもトレンドがある。
ほんの5年・10年先には気象が最先端の注目ジャンルになっているかもしれないなぁ。