ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

ボードゲーム制作を行う「ペンとサイコロ」のブログです。公式サイトはこちら→http://penanddice.webcrow.jp/

精神病で死ぬということ

精神病の話をするのに自殺の話は避けて通れない。
最近は鬱を取り上げた作品も多いが、この部分については触れたり触れなかったりと様々。


自殺の話はタブー視されたり、本当に見当違いな方向から対策が打たれたりする。
まずは自殺する人の気持ちを多少なりともイメージできればと思うので、今日はこの話に触れてみる。

Suicide / Digiart2001 | jason.kuffer

自殺だって、色々ある

まず大前提として、「本気で死のうとしている人は止められない」
あと、「死のうとしている人と、死ぬフリをしている人は違う」という二点がある。


過去の犯罪史などを見ていると、獄中の自殺が結構ある。
この中でも「何があっても死ななければならない」という人たちは、対策をかいくぐって自殺している。
こういうのを見ると、人間本気になると自殺なんて止められないと思う。
例えばベルトと階段の手すりがあれば、高さ50cmでも首つりが出来る。

pra: today's 1 card reading - the hanged man. Let go, turn old ways upside down. Step outside of time & reflect. Live in the moment! / jessica mullen

そして普通の家庭には洗剤(猛毒)も、包丁もある。
本気で死ぬ気があるなら、それを止める手段はない。


また、逆に多くのリストカットは死ぬ気があってやる訳じゃなく、
「ほら、死のうと思ってるんだよ、こっちを向いて」
というアピールの手段としてやられるのは有名な話。
これは知識として言っているのではなく、なぜか嫁の周りにも多い
多くの鬱病患者やリストカッターたちの話を聞いての話なので、まぁ間違いないんだろう。
ちなみに「振られた彼にこっちを向いてほしくてリストカットしたけど、血が止まらない、どうしよう」
といいながら死んでしまった人の話というのがこのマンガであった。
Mind assassin (1) (集英社文庫―コミック版)Mind assassin (2) (集英社文庫―コミック版)Mind assassin (3) (集英社文庫―コミック版)
こういう死に方も本当にあるのかもしれない。何ともやるせないが。

マンガ自体はものすごく好き。
主人公はドイツの軍の研究で特殊な能力を植え付けられている。
(植え付けられたのは祖父で、主人公はその力を受け継いでいる)
その能力は「記憶を消すこと」。
元々は暗殺用だが、「イヤな記憶を消すこと」で人の役に立てないかと
表ではクリニックを、裏では許せない悪人の殺人を繰り返している。
(誰を殺すかは主人公の判断なので、そこはどうかという話だが。)
少年誌でスタートしたが、内容が内容なので青年誌に移動。
青年誌に行ってからの方がどぎつい内容を扱えるようになって個人的には面白い。

精神病の自殺は「死にたいけど死にたくない」の葛藤

精神病で自殺する人を一概にまとめてはいけないと思うので、あくまで我が家の話として捉えてもらいたい。
鬱の場合は、多少動ける気力のあるときの自殺が多いらしい。
鬱は外に対する働きかけが少なくなるので、周りから見てその心境や内情がわかりにくい。
嫁はおそらく双極性障害二型」という症状じゃないかと考えているんだが、
叫んで飛び出るパワーがある状態で自殺衝動が起きる。
これは押さえ込むのはものすごく大変だが、その分何を考えているのかがよく分かる。


精神病になった人たちは、自己嫌悪・自己否定が激しい。
これは自分・嫁・その友人たちに共通している。
生まれつきの特性もあるだろうが、病気でマイナス方向に思考が偏っている部分も大きい。
だから自殺は「(死にたくないが)自分がいると迷惑をかける(から死にたい)」という思考から起きる。
この括弧書きの「死にたくないが」がすごく重要で、ここが上に挙げた事例とは大きく異なる。
嫁の場合は夜中に起き出したり、制止を振り切って外に飛び出したりしていたが、
マンションの13階の手すりの上に立って、そこで散々悩んで
「でも子供が母無し子になるし、ショックを受けるし、夫(オレ)が責任を感じるし、親に申し訳ないし、
 マンションの価値が下がってご近所さんに迷惑をかけるし・・・」
と散々「死ななくて良い理由」を挙げて踏みとどまったということ。
マンガで落ちている財布を見つけたら、自分の中で天使と悪魔が闘うイメージがあるが、まさにああいう感じらしい。

Devil , School-girl, & Angel / How I See The World Around Me

※「devil vs angel」で画像検索したらまたトンデモねぇ画が出てきたな・・・
自分を説得できれば落ち着いて家に戻ってくるんだが、ものすごく疲れるとのこと。


多くの人が考えるとおり、自殺は「普通じゃない物」で、それはやはり精神病の人たち本人にとってもそう。
だから、自殺するその瞬間まで「生きたい」「死にたい(死ななければならない)」が葛藤している人も多いんじゃないだろうか。
自殺対策には、療養や経済的な対策など、根本策として打つべき対策はたくさんある。
だが、それとは別に、いざ衝動的に自殺しそうなときに、それを踏みとどまらせる策も、色々あるし、重要だと思う。

駅のホームドアは自殺対策になるのか?

嫁の状態が悪いときには、マンションのエレベーターから家の玄関まで向かう間でも
「あ、ここから落ちたら死ねるんだね」
と言ったことがあった。
重い自己嫌悪に陥っているときに、「こうやれば簡単に死ねるんだ」というイメージを起こすことは非常に危険。
だから、簡単に乗り越えられる手すりなどは危険。
包丁が家にあってまずいかという判断は難しいが、とにかくその本人にとって死に至るイメージが出来る物であればまずい。
逆に言うと、そういったイメージから遠ざけることは、自殺対策としては有効と言える。


この観点で言うと、駅のホームにドアをつけて落下を防止する「ホームドア」は有効。

homedoor open / hirotomo

「本気で飛び込み自殺するような人はホームドアを乗り越えるんだから意味がない」
という意見は、衝動的な自殺を分かっていない。
ホームドアのない駅は「簡単に飛び込める環境を提示している」のが問題の本質ではないか。
衝動的に自殺しにくくするという意味では、ホームドアは十分に機能する。

自殺衝動のある家族をお持ちの方に

自殺衝動が出ている状態では、第三者が何かを言っても実際はほとんど効果がない。
あるとすれば、とにかく自殺しようとしている本人に「話してもらう」こと。
自殺をしようとしたときにかける、いのちの電話というサービスがある。

・リンク → 一般社団法人日本いのちの電話連盟
嫁も一度、ここに電話したことがあるらしい。
嫁曰く、担当者の対応は精神病のことを分かっているとはとても言えないものだったらしいが、
とにかく電話して話をするうちに死ぬ気がなくなったということなので、結果としては効果があった。
精神病の人で、自殺衝動が出てしまったら、無駄になるかもしれないけど一度電話してみてください。


家族の場合は、多少こちらの言うことを聞いてくれるかもしれないが、基本は話をさせるというのは同じ。

gold phone / ellyjonez

吐き出せば楽になる部分も多いので、とにかく話をしてもらう。
解決策のない話であったり、解決策を出すとまた反論されることもあるので、無理に解決策のを考えたり、説得はしない。
この辺、飲み屋で愚痴を聞くときと同じ考え方をしたら良い。
ここが分からなくて、最初の頃はかなり大変で、マズイ事態にもなった。


だから家族の方には言っておきたい。
説得に失敗して話がこじれても、そんなもんです。
悩む必要はないので、次に繋げましょう。
なぜこんなことを言うかというと、家族がヘコんで、悩んでも良いことはないし、悩むと余計悪い方向に行くから。
家族がどれだけ精神病を気にせず、気楽に過ごせるかはとても大事で、難しい。
家の誰かが過呼吸になったり、死にたいと言っても、ヘラヘラしていられるぐらいで構わない。
家族が笑っていられないと、病気の本人はもっと大変になる。
「頑張って気にしない」ようにするぐらいで、ちょうど良いんじゃないだろうか。

自殺を減らす、町作り

日本の町の作り方は、精神病の人間には優しくない場合がある。
ホームドアもその一つだが、生活空間である町中では、安全な町作りを心がけることで自殺者を減らせる可能性がある。
たとえばマンションの廊下。
日本のマンションでは、高層でも廊下から外が見える設計のマンションが結構ある。
あれは良くない。
子供の安全のためにも、精神病患者の安全のためにも、廊下は建物の内部に作って貰いたい。


本当に計画的に、死のうと思っている人を止めることは難しい。
でも、精神病に関しては突発的な自殺衝動も多い。
これは何度も強い自殺衝動を持って飛び出そうとした(何回かは実際に飛び出した)嫁を見ていて思う。
その瞬間には「死ぬ!」と強い意志を持って出ていくのに、波が収まるとケロッと自殺衝動は消えている。
(ただし体力的にも精神的にもものすごく疲弊している)
もちろん家族のサポートは必要だが、社会的にこういった自殺の状況を把握し、
自殺衝動を一歩長引かせるような対策を打っておく。
それがホームドアであり、マンションの廊下に窓を設けることであったりするのだと思う。


我が家は奇跡的に、嫁が生きているが、一歩どころか、半歩間違えば嫁は今頃生きていない。
家族が自殺した家では、それを止められなかった家族はもの凄い自己嫌悪に陥ると思う。
自殺への対策は、自殺する本人をいかに止めるかに焦点が向いているように見えるが、
実際には年間3万人以上が自殺しているのだから、自殺者の家族も年間5万人とか10万人に登るはず。
自殺対策をPRするなら、残された家族への精神的なサポートももっと前面にPRしても良いかと思う。

・リンク → 自殺対策支援センターライフリンク


どうにも後ろ向きの話になったが、精神病に関して言えば、「自殺しなかったこと」は癌の「生存率」と同じなので
「生き延びられた」という一つの「成功」だと思ったらどうだろう。
そうすれば、「あ、生きていられたね。偉い!」と自分や、家族を褒めるきっかけにならないだろうか。
後ろ向きな精神状態になっているときには、とにかく褒めたり笑ったりするネタが多いことが良い。
「今日も一日生きられた」こと自体を毎日家族で褒め合えば、少し前向きに生きられないかな?
少なくとも、うちはこれ、やってました。
今、自殺衝動で悩んでいるご家庭でも是非。
そしてもし、今、自殺衝動があって、それを家族にも話していない方は、まず話してみてください。