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ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

ボードゲーム制作を行う「ペンとサイコロ」のブログです。公式サイトはこちら→http://penanddice.webcrow.jp/

バカの壁、みんなの中の壁、「不正」と「不当」のすり替え

友人はつい先日まで、世の中が平面に見えていたらしい。
アバターなんかの3D映画ではきちんと3Dに見えていて、
「奥行きが見えるのは映画の中だけ、映画って凄いな」
と思っていたとのこと。


彼は齢三十を過ぎて、自分が立体視が出来ない症状を持っていること、それが解消できることを知った。
今は特殊なメガネで対策をしている。
将来的には手術もするらしい。

隣人、知人のなかの壁

少し前、養老孟司さんのバカの壁が話題になったことがあった。
「バカ」という分かりやすくインパクのある言葉を題名に持ってきているが、
要は「あなたと他人のアタマの中で感じる世界は違いますよ」という話。
それにしても調べたら出版部数400万部以上なの?凄いな。

バカの壁 (新潮新書)

バカの壁 (新潮新書)


養老孟司さんは脳科学の側面から見ているが、上の友人の場合はそもそも目に見えている世界が違う。
また別の友人は、本人曰く「弱い色盲」らしい。
日常生活に問題は無いが、出版関係の道に進もうとした時に
色が正確に感知できないために、その道を諦めたとのこと。


世の中にある現象は一つ、というのが「科学的」な考え方と思うかもしれないが、
実際にはこれほどまで人間一人一人の感じ方は違う。
それは生まれつきの「感性」でまとめてしまうことも出来るだろうし、身体的な違いから来る物もあるだろう。
そしてそれまでの自分の知識や経験から感じ取る物も違う。
「人の気持ちになって」なんてことは小学校から言われることだが、
人に気持ちになるには、相手の立場を想像するだけの色々な知識が必要になる。

医者の壁、診断の壁

彼のその症状も、最初は眼科医も分からなかったらしい。
それがある眼科医から「脳の方を見てもらって」と紹介を受け、
更に紹介された別の医者で詳しい診察を受けて分かったとのこと。
医者も神様じゃない。
自分の専門外のことは分からない。
ある医者にとっては「そんなもん、問診だけでわかるじゃねぇか」
という症状も、別の医者にとっては
「レントゲンもMRIも血液検査もやってみたが、良く原因が分からない」
なんてことになりかねないし、実際にそういうものらしい。

2008.11.25 - The physician / a.drian


内科で散々「原因不明」と言われた患者が、かなりの診察を受けた後に
精神科や心療内科に回されるのは以前は良くあったらしいが、これも同じことだろう。
医療が進んで業務が細分化する中で、どうしても自分の領域以外について
専門的な知識を持つことが難しくなっているのだと考えられる。


実際にこんな話はいくらでもあると思う。
頭痛だと思っていたら脳溢血の一歩手前だった、
足がしびれると思ったら脊髄の神経に問題があった、
咳が出ると思ったら結核だった。
どれも専門医ならすぐに分かる問題かもしれないが、素人には分からないし、
もっと珍しい症状なら、行った医者の科目によってはその医者では判断が付かない場合もある。
これは別に医者が悪いわけでもないし、システム的にどうこうできる問題でも無い。
逆に知識を伝えるためにテレビで「肩こりがこんなに危険」と喧伝すると
素人判断で「自分はこんなに深刻な病気かも」と不安を煽ることになる。
(実際に一気に患者が増えて大変、とはある医者のコメント)
とにかく、「ここに聞いたから大丈夫」「ここに行ったから間違いない」という単純な物ではないし、
色々な情報を自分から積極的に取り入れていくしかないですよ、という当たり前の結論になるのだけれども。

正義にも、壁がある

近頃は生活保護の受給について色々と問題になっているらしい。
ワイドショーには全く興味が無いので詳しいことがよく分かっていないが。
というかなんでこんな問題にみんな盛り上がるのか良く分からない。


受給にはルールがあるわけだから、ルールに則っていれば問題ないし、
ルールに則っていなければ「不正」受給じゃないのかな?
不正ならルール違反だから、法に則って裁いて貰えばいい。
逆に「不正ではない」が、倫理的に「不当」だと思うのなら、
そんな抜け穴があるルールの側に問題がある。

Yellow Card / joncandy

それなら行政にルールを変えて貰うしかない。
ルールの隙間を突いた人達は「上手くやった」わけで悪くはない。
程度の差こそあれ、自分たちも同じ立場ならやることじゃないだろうか。
それは「やっかみ」であって、「正義感」ではない、と思う。

「生活できる障害者」の受給は不当か

あまり一般に知られていないが、「医療年金」という制度がある。
これは重度の障害を持っている人達が、一定額を支給される制度。
(多少語弊があるかもしれないが、ここではこうまとめておく)
医療年金の支給にあたっては、医師の診断書と、行政の審査を受ける。

正しくは「障がい者」あるいは「障碍者」と書くらしいが、どうにも据わりが悪いので「障害者」と記載する。
乙武洋匡さんもtwitterでそう仰っている。
不満があればご意見ください。ただし障害者ご本人からの意見をお願いします。

五体不満足

五体不満足


質問票には「働いているか」についての質問もあるので一概には言えないが、
働いていて、一定額の収入がある障害者が医療年金を受け取って良いのか、という話がある。
個人的には、これは受け取って良いと思う。
例えば、(個人名を挙げて申し訳ないが)乙武洋匡さん。
彼は講演もしているし著作も大ヒットしているし、収入は十分にあるだろう。
でも、個人的には彼は堂々と医療年金を受け取って良いと思う。
だってどう考えたって一級の医療年金の資格を満たしているでしょう。
もちろん本人の意思で「受け取らない」というのならそれはそれで構わないが、
障害を持っていると、普段の生活にやはり支障がある。

Wheelchair emergency exits / Martin Kliehm

支障があるというのは、つまりカネがかかると言うこと。


健常者なら5分で行けるところに10分かかるかもしれないし、
健常者なら上れる階段を避けるためにタクシーを使うこともあるだろう。
「収入があるならそのぐらい払え」
というのはちょっと乱暴な意見だろう。
それだと、障害者が健常者と同じ生活を来るためには、健常者よりなお稼がなければならない。
それは平等じゃ無いと思う。
日常生活を送るためにお金を使わざるを得ないのなら、その分はサポートすれば良いのじゃないだろうか。
例えば車いす

Wheelchair in shades / Marcel Oosterwijk

障害者の乗る車いすは、ルール上は「乗り物」ではなく「足」と同じ扱い。
例えばお酒を飲んで車いすに乗っても道交法違反にはならない。
だって「お酒を飲んだら歩くな!」とは言われないでしょ?それと同じ考え方。
それなら、車いすが買えるぐらいのお金は、生活に必要な金額として出して上げれば良いだろう。
だって、あなたの足は、それを得るためにお金を払っていないのだから。

「不正受給」と「不当受給」を混在するな

上の話は、「ルールをいかにすべきか」という原理・原則の話。
これとは別に、実はこの医療年金も、不正受給が問題になっている。
ネットで調べると簡単に「医療年金の受け取り方」というノウハウ本が有料で販売されているのが分かる。
ターゲットは精神疾患
精神疾患は外見的に判断が難しく、医者の診断に頼るところが大きい。
これを悪用し、精神疾患の診断書を持って不正に医療年金を受け取る話が結構あるらしい。

a solid lunatic / Jesslee Cuizon

精神疾患の英単語の一つが「Lunatic」。月は人の心を狂わせると思われていたのか。


これも、昨今話題の「生活保護」の問題と似ている。
「働けるのに医療年金を受け取るのはどうなんだ?」という倫理面の話は、
ルール上受け取ることに問題は無いという意味で「不正受給」ではない
だが、これが「不当」かどうかは、法のルールから考えなければいけない問題だ。


だが、医者も騙して「不正受給」するのは明らかに問題
これには刑事罰も含めて対処しなければいけない。
そして、この抜け道が簡単に利用されるのなら、ルールを変えなければいけない
ちなみに精神疾患は受給を受けなければいけないほど大変なの?」という疑問を持つ人もいるかもしれない。
大変です。
自分も精神を病んで勤務中にぶっ倒れて入院し、休職(診断書を提出するも病欠が認められず有給扱い)したが、
それを抱える家族も大変。
家族が精神疾患だとどうなるか。
夜中に叫んで起き出すのでロクに寝られない。
過呼吸(過換気)が起きるので長時間の運転は危険。
長く歩けないので運動は難しい。
パニックになるので人混みは危険。
家事も過呼吸が起きるのでほとんど出来ない。
結果、どうしても外食が多くなるので食費も増える。
それを「甘えている」「贅沢だ」というのは違うだろ、と個人的には思ってしまう。


ちょっと真面目な感じの話もしたが、
物の本によると正義漢の強い人ほど寛容性が低いらしい。
個人的には今回の生活保護の受給問題を聞いて、仕組み的に「そんなもんじゃねぇの?」と思ったし、
それで個人を攻撃するつもりもない。
そんなシステムを放置して無駄なカネを垂れ流している行政には文句があるが、
文句を言う主体がないもんだから困ったもんだよなぁ、というぐらいだ。
どちらかというと怖いのはそういう話に対して目くじら立てて怒る人達。
怒っている人達は何をそんなに怒るのだろう。
自分の血税がかすめ取られたから?
それはあなたの懐のお金のゼロコンマ何円でしょう。
それより何百万もの借金を作っている国の方針に怒らず、選挙に行かない若者を怒れよ、と思うんだが。
政治家を動かしてルールを変えなきゃいけない話なのに、
政治家に踊らされて下々同士が醜く争わされている感じがするよなぁ、と思うんだけど、違うのかな。

Jul 13, 2009 - Chess moves / Ed Yourdon