ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

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チョコレートがないなら、(名状しがたき何か)を食べればいいじゃない

チョコレートが食べられなくなるかもしれない、らしい。
ネタ元は先月の日経サイエンス

日経 サイエンス 2012年 05月号 [雑誌]

日経 サイエンス 2012年 05月号 [雑誌]


チョコレートはカカオの木から出来る、と言うことを知っている人は多いと思うが、
それ以上のことは結構知られていないと思う。
例えばこんなこと。

  • カカオの木は幹から直接実がなる
  • カカオの種子(カカオ豆)は、フットボール大の鞘(カカオポッド)から取り出す
  • カカオの木が生えるのは緯度南北18度以下の熱帯地域
  • カカオの木の栽培農家は500〜600万人
  • カカオは肥沃で水はけの良い土地を好む
  • カカオの主要な品種は10種類だが、植物種としては同一。
  • 現在のカカオ生産量は推計約370万トン


/ manalahmadkhan


重要なポイントを上げると、カカオの木は「弱い」。
基本的には一種類しかないので、何かの病気が流行ると、すべての木が一気にやられてしまう。
対策を打とうにも、種類が少ないので交配による品種改良が難しい。

科学と農業

この問題に限らず、農業の問題は科学雑誌でもちょくちょく問題になる。
共通しているのはこの二点。

  • 中国・インドの経済成長による需要増加
  • 地球温暖化などによる生息域の変化


カカオは現在の370万トンから、2020年には消費需要が400万トンに増加するとみられている。
この需要増加は経済成長による需要増加が大きい。
裕福になることで、より多くの人が嗜好品であるチョコレートを食べる機会が増えると。
経済発展により、こういった争奪戦はこれから様々なジャンルで繰り広げられていく。
日本ではマグロやサーモンなど、寿司ネタの争奪戦が既にニュースになっている。

salmon / Andrea Pokrzywinski


また、温暖化によって今までの生産地域が変化すれば、既存の農場での生産量が減少する。
その結果、生産域が変化した先で新たに農場を作れれば良いのだが、
国が違ったり、別の農業が既に確立していたり、なかなかそのまま生産域を移動する訳にはいかない。
結果、生産域が減少し、生産量が減少することもあるかもしれない。

野菜工場と養殖

そうして話題になっているのが野菜工場「養殖技術」だ。
既にカゴメはトマトを巨大な野菜工場で作り、「こくみトマト」ブランドで展開している。
どこまでを外気から遮断し、どこまでを自動化するかは様々だが、
農業の工場化・自動化はこれから進んでいくことだろう。

とまとの森 / Kentaro Ohno


養殖技術は野菜工場よりは手間がかかる上に難しく、
高付加価値の物からでなければなかなか浸透しないだろうが、
チョウザメやマグロは基礎技術はほぼ完成しているらしい。
あとはその安定度とコストの問題で、こちらも将来的には発展していくジャンルだと思う。

花開くフェイク食品

日経サイエンスの記事では、貧しい農家への農業技術支援から、
強い品種の育成、カカオの単一農場ではなく、混合林を作る事での保水力アップなど
様々な支援により対策が可能だとしている。
もちろんこういった対策は積極的に進めていただければ良いと思う。
だが、生産量の増加が難しかったり、どうしても需要に追いつけない例は今後出てくるだろう。
その時にどうするべきか。


チョコレートなんて、基本的には嗜好品だ。
古くは「薬」として摂取されていた物だが、いつまでも農産品を使わなければ行けない理由もない。
もちろん高級なチョコレート菓子では、これからもカカオ豆を使えば良いと思う。
しかし、安価なお菓子では、「チョコレート的な何か」で代替することも考えればいいと思う。
サッカリンから、合成着味料は連綿と開発・採用されている。

  • チョコレートと同じ味の合成物質を作る
  • 添加物を使い、より少ないカカオの量で同じ味を出せるようにする
  • チョコレートとは全く違う、新しい「甘み」を開発する

このどれでも良いが、新しい甘さを追求すれば良いのではないだろうか。

男は黙って、メロンソーダ

特に三番目の「新しい甘み」なんて受け入れられるわけがない言う方には、
その成功例として「メロンソーダ」を個人的に挙げたい。

メロンソーダ / june29

メロンソーダにはメロン果汁なんて入っていない!
と聞いて、「それはダメだろう!」という人もいないだろう。
wikipediaを正として良いのか分からないが、参照するとこんなものらしい。

メロンソーダは、炭酸飲料の一つで、炭酸水に食用色素(緑色3号、ベニバナ黄色素、クチナシ蒼色素など)で
緑色に着色し、甘味料で甘味をつけるなどしたものである。

で、このメロンソーダ、なんだか分からないが、とにかくどこにでもある。
ファミレスのドリンクバーには、まず用意されている。
そして人気がある。
先日、男女10人ぐらいでファミレスに行ったときに観察すると、
男性5名(20〜40代)のうち、3名がメロンソーダを取っていた。
「男は黙って、メロンソーダ」なんである。
(母集団に偏りがあったかもしれないことはとりあえず無視)


メロンソーダがどういう経緯で作られて、どんな飲み物の座を奪ったかは分からない。
ただ、少なくとも近年作られた飲み物で、新しいシェア(地位)を作ったことは間違いない。
嗜好品では駄菓子やガムはこういった「よく分からない合成品」がたくさんある気もするが、
この「よくわからないもの」が、より大きなシェアを持ち、より高額な物を置き換えていくのかもしれない。
こういった新しいものは「粗悪な合成品」と思われがちだが、
「全く新しいものを人間が一からデザインした」と考えると凄いことだと思うんだがどうだろう。
未来の食卓には、全く新しい味が奇っ怪な形状で並んでいるかもしれない。
うん、まさに未来だね。


未来のシェフは、レストランではなく、企業で新しい味を合成している、というのはあり得る未来像かもしれない。
あるいは3Dプリンタと味の合成が出来れば、未来の創作料理は本当の「創作」になるのかもしれない。
創作料理に栄養を求める訳じゃないからね。
斬新な形を味を求めるのなら、それでも構わない。
例えば完全に王冠の形状を作って、「これが私のイメージする王冠の味です」とか。

Crown on Skeppsholmen Bridge / Jodimu

そうすると、未来のシェフに求められるのは共感覚なのかも。
しかしこうなると料理マンガはやりたい放題すぎて逆に成立しないな・・・


あ、ちなみにwikipediaに「炭酸水にかき氷のメロンのシロップを入れるとメロンソーダ」と
書いてあったので作ってみたら、似て非なる物が出来ました。
誰だ、書いたやつ!