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今から、耳を塞ぎたくなる話をします

今から、耳を塞ぎたくなる話をします。

・リンク → 少女を性奴隷、少年を戦闘兵に、ソーシャルで告発する「KONY 2012」とは?−GIGAZINE

ある運動の話。
「KONY 2012」

リンク先のGIGAZINEがキレイにまとめられているので、概要部分を転載します。

このムービー自体はその名の通りJoseph Kony(ジョゼフ・コニー)という名の人物を有名にすることを主目的としています。なぜ有名にしようとしているかというと、まずジョゼフ・コニー(自称「ウガンダの預言者」)はLRA(神の抵抗軍)というウガンダ北部地域と南スーダンの一部などを中心にして活動している反政府武装勢力の指導者であり、自らを「霊媒」であると主張、自分だけに聞こえる霊の声に従い、「十戒」とアチョリの伝統に基づく神政政権の樹立を掲げて戦闘を30年近く続け、戦闘員の85%は11歳から15歳の誘拐した少年少女となっており、少年兵の場合は自分の両親の殺害や抵抗する者の耳・鼻・唇などの切除を強要され、少女の場合は指揮官たちの報酬として性的奴隷にさせられ、妊娠して生まれた子どももまたこのLRAの兵士にさせられる、という状態が続いているため。

実際に国際刑事裁判所によって2006年に「人道に対する罪」で逮捕状が出ていますが、いまだに逮捕されず、野放しの状態。コニーの妻は誘拐した少女で27人から50人ほどいると見られ、今もなお子どもの誘拐が続いており、この事態を告発する社会運動を広めるために作られたのが「KONY 2012」です。

とにかく、耳を塞ぎたくなる話。
それが世界で指名手配されてなお捕まらない。
その私兵の数はなんと3万人とも。
酷い話だ。
自分に出来ることは何かあるのか?等と考えているとこんな話が飛び込んできた。

嘘ではないが、本当でもない

・リンク → kony2012問題 - Togetter
・リンク → tnfuk (today's news from uk+) とあるオンライン・キャンペーン(アメリカの「プログレッシブ」陣営の反知性主義)
簡単にまとめてしまうと、もうこの「kony」氏はウガンダにいないだけでなく、
現地ではこの活動に反対の声まで上がっているとか。
現地は既にこのような状況にないという多数の声のリンクが紹介されている。
しかもこの件、主導している団体(Invisible Children Inc)が怪しいと。

それにしてもwikipediaのこの団体の項目(英語)、参考文献がほぼその団体というのはギャグだな。
現地からすれば、アメリカの派兵は現時点では不要で、疫病や貧困対策の方が急務と。


この「kony」が実在して、悪いことをしたところまでは事実らしい。
ややこしいのはその活動が最も活発だったのは7〜8年も前で、現地からすれば
「今さら?」という感覚だということ。
「その話よりも、今困っていることをなんとかしてくれ」というのが現地の声で、
何より周辺国に潜んでいる氏を捕まえるのに、なんでウガンダに派兵する話になるのか分からないと。
なんとも・・・・


寡聞にして、ウガンダの情勢は分からないので、このどちらが正しいのかは知らない。

ただ、下手に扇動的な情報を鵜呑みにすることは危険だと言うことだけはよく分かる。

外から見れば、日本だって十分「よく分からない国」。

世界から見たら日本なんて極東の島国で、
そもそも中国と日本の区別が付いていなかったり、日本が島国じゃなく中国大陸の一部だと思っている人も普通にいる。
「世界第二の経済大国」と言っても
SONYはアメリカの会社に決まってるだろうがYo!」

Sir Howard Stringer 2 Shankbone Metropolitan Opera 2009 / david_shankbone

SONY社長(3月末まで)、"Sir" Howard Stringer
と思っている人もいるし、所詮自分から遠い国の知識なんてそんなモンだ。

あなたはアフリカを知っていますか?

同じ事はアフリカについても言える。
韓国と朝鮮の違い、台湾と中国の位置関係と違いは日本にいればよく分かる。
ではケニアタンザニアは?

コンゴザンビアは?

コンゴの国土なんて日本より圧倒的に広くて世界第11位なんである。
でも、よく知らない。
GIGAZINEは日本では有数のブログサイトだが、その中の記事のシリーズで
アフリカを縦断中の「周藤卓也@チャリダーマン」さんの記事がある。
その現場からの、文字通り足で書く記事が大好きなんだが、その中でこんな物があった。
・リンク → ザンビアを最貧国と報道してバンブーバイクを売ることが「貧しさ」を作っているのではありませんか?−GIGAZINE
ニュースでも見たことのある「竹の自転車」

Bamboo bicycle / ebis50

その製造国であるザンビア「最貧国」として紹介していることに疑問を呈している。
正直、日本に住んでいてザンビアは最貧国」と言われてもほとんどの人は「ふーん」とそのまま受け入れると思う。
南アフリカ共和国を中心としてナミビアボツワナジンバブエとともに発展の進んでいる国々の一つであるザンビア(上記記事より)
という印象はほとんどの人が持っていないんじゃ無いだろうか。


最初に挙げた、kony2012のGIGAZINEの記事は、実は面白いまとめ方をしている。
記事の始まりはあくまでYouTubeにアップされた動画の再生回数などの「注目度」を挙げ、最後はこう締めくくっている。

このプロジェクトを実行するために計画されたさまざまな仕組み・アプローチ・方法論は今後、日本においても同様の事例が起きた場合、あるいは同様の行動を起こして変革を促そうとする場合、かなり参考になるはずです。

つまり、内容についての批評はせず、あくまで「手法が上手いね」とだけ言っている。
下手に扇動することを避けるために中立的に書いたのか、そもそも記事の内容に疑問があることを
分かっていたから賛同を避けたのか、そこは分からないが。


・・・ちなみにこの件には現在壮絶なオチが現在進行中。
GIGAZINEでも取り上げられています。
またその中でGIGAZINEも「kony2012」に対しての疑問を取り上げています。
こっちは別に見なくても良いと思う。
・リンク → 「KONY 2012」の設立者が全裸自慰行為で逮捕、ムービーも公開中−GIGAZINE

ネットの海では、すべては偽造できる

文章も映像も偽造が出来るので、自分から遠く離れた場所の出来事ほど、よくよく注意して判断しなければいけない。
今の日本では放射能汚染などはその最たる物だろう。

Tokyo Earthquake March 11, 2011 / raneko

放射能汚染の有無はもちろんだが、その風評被害の方が恐ろしい。
汚染の有無は数字で確認や反論が出来るが、風評は起こっているかいないか自身が「言った者勝ち」になるからだ。


直近ではこんな出来事があった。
・リンク → NEWSポストセブン|福島近郊のSAで福島の銘菓、野菜、米など大量に捨てられる
福島の近郊SAでは、福島のお土産や野菜が大量に捨てられているという記事。

Plastic / Joost J. Bakker IJmuiden

「お土産に貰ったと思われるものを、捨てていく。なんて酷い話だ」
という話で、なんとも風評被害は恐ろしい、と思ったら直後にこんな話が出た。
・リンク → 福島産の食べ物がSAで大量に捨てられてるという記事は、デマの疑惑濃厚|ペンドラゴンの記念兵
実際に近隣のSAで働いている人が、出入りの業者や更に近隣のSAにまで確認したところ、
この記事のような事実は一切無い、とのこと。
さて、どちらを信用するべきか。


ネットの普及はデマの拡散も速くなったが、それを正す情報も素早く拡散するようになっているらしい。
震災の直後も様々なデマが飛び交い、それが急速に収束するなど目に見えない情報戦が飛び交っていた。

「簡単に手伝える」ことは「簡単に嘘に荷担できる」ということ

konyの話にせよ、福島の話にせよ、
悪に対して「これは悪いことだ」と思わせ、その義憤に対して「拡散してくれるだけで良いですよ」
「たった5ドル払ってくれると協力できますよ」という情報拡散・協力要請が一番タチが悪い。

MAKEPOVERTYHISTORY / P〓l Berge

気軽な拡散ほど、拡散力が強く修正に時間がかかるからだ。


今の時代には、情報を自分で取捨選択が求められるが、みんなそんなにヒマじゃない。
そしてこういったタチの悪い拡散者ほど、「急がないといけません」と思考停止を訴える。
だから、まずは脊髄反射で拡散するのを辞めるべきだと思う。
Facebook「イイネ!」したり、twitterRTする時は、自分が書いたものとして、責任を持つつもりで拡散してはどうだろうか。

FACEBOOK LIKE / owenwbrown

「それじゃ記事をRTできない」ならそれでいいんじゃないだろうか。
くだらないネタをRTする分には平和だが、デマの拡散に一役買うぐらいなら沈黙している方が良い。


震災直後に多数の義援金の話があったときに、糸井重里さんがこんなことを言っていた。
・リンク → 寄付についての一指針 by @itoi_shigesato−Togetter
日付を見て頂くとよく分かるが、本当に震災直後、
まだ被害の大きさも分からず、誰に、どの程度の義援金が必要かも分からない状態でのtweetだ。
当時の混乱した状況の中で、という前提で読む必要はあると思う。
糸井重里さん曰く、義援金の基準は「じぶんひとりを3日雇えるくらいのお金」が良いと。
更に少額の寄付は経費の方がかかるので、無い方が良いとも言っている。
今の時代、情報とお金は同じように貴重で、重要だ。
記事も同じように考えられないだろうか。


この記事一つにしても、それぞれのリンクは確認し、内容を理解した上で書いている。
三日分とは言わないが、少なくとも自分なりには手間をかけて書いている。
自分が読んだ記事はきちんと納得の上で拡散しているか?
表題と最初の二行だけ読んで拡散した記事が誤報で、被害が出ることがないか?
もしかするとネットの時代、ソーシャルの時代では、正に沈黙こそが金なのかもしれない。