ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

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新ディスプレイ考・3:薄いディスプレイはどこに行く

ディスプレイの話をしたのでもう一つ。
夢の技術として取り上げられるものの一つに「紙のようなディスプレイ」がある。


この技術って、先日も取り上げた3Dテレビに近い物がある気がする。

LG전자, 시네마 3D TV 대화면 라인업 강화 / LGEPR

一言で言うと
「で、それで何をするの?」

昨日までの記事
・リンク → 新ディスプレイ考・1:今のテレビ業界の惨状
・リンク → 新ディスプレイ考・2:新しいディスプレイの形

ペラペラデバイス

紙のようなディスプレイは「フレキシブルディスプレイ」とか「ペーパーディスプレイ」とか言われる。
またデバイス名としては電子ペーパーといわれる。
まだ開発段階なので名前が統一されていないのが現状みたい。
個人的には「フロッピーディスプレイ」とかどうかと思うんだが。
最新の情報をと思ったが、研究している企業が多くどこが一番実用化に近いのか判断が難しい。
一番近いのはこれかな、

・リンク → 折り曲げのデモに歓声、有機TFT駆動の電子ペーパーをソニーが開発:日本経済新聞


凄い凄い。
しかしちょっと調べても2005年ぐらいからこれに近いデモが見つかる。
どこも実用化しないのは安定度や更新速度、カラー化や寿命などたくさんの問題をそれぞれが抱えているから。
ただ、それを解消したとしても何に使いたいかがはっきりしないのも、課題としては大きい。

で、どうしたら売れるの?

ではこの技術がどうなれば新しい市場を開拓できるのか。
個人的には、ソニーの技術を実用化して、安くなれば電子書籍を作って欲しい。

「今更?」と思うかもしれないが、あれだけ薄ければ、「本と同じ形のディスプレイ」が作れる。
これって、今まで全く作られたことがない、新しいジャンルの製品になるはず!


作り方は簡単。
上の電子ペーパーを、表裏で貼り合わせ、それを例えば20枚貼り合わせる。
そうすると40pの「本」になる。

Books / shutterhacks


本は情報収集のアイテムとしては非常に優れていて、
きちんと読まなくてもパラパラめくるだけで概要を把握できる。
この「パラパラ」が、電子書籍ではできない。

Red hardcover book with flipping pages / Horia Varlan

いくらサムネイル表示したり、更新速度を上げても、この部分は本質的に変わらない。
それなら、物理的に何十ページを重ねた表示器を作ればいい。

技術的なポイント

電子書籍は本と戦うことを宿命づけられている。
本の「パラパラ」に対抗するため、よりキレイに、より速く表示を切り替えることに注力している。
ところが、数十pを一度に表示するのなら、更新速度は遅くて構わない。
更新に1分かかっても、そのあとはゆっくり眺められる。


逆に数十pしかなくても、そのページ分だけを分割して読み込めばいい。
表示器が40p分なら、200pの本なら5回読み込めば全体を見ることができる。
「これ一冊あれば何でも読める」という電子書籍ならではのメリットは生かせる。

安くなる宿命のデバイスの売り方

昨日は既存のディスプレイを使った技術、今日は新しいディスプレイ技術の開発方向について書いた。
共通して言えるのは、デバイスはどんどん安くなり、それ単体での利益は難しくなっていくということ。


ディスプレイは「紙」と同じだと思う。

30 Sheets of Square Shape Paper / Andreas.

紙の起源はパピルスだと聞いたことがあったが、あれは分類上は紙じゃないらしい。
紙は西暦100年頃、中国で発明され、紙が日本に入ってくるのには500年を要している。
当時は紙は戦略物質だった、らしい。
ヨーロッパへも厳しい規制がかけられ、製紙法がヨーロッパに伝わったのは8世紀、
紙の製造が工場で行われたのは更に下って1150年(スペイン)とのこと。
そんな極秘技術も、今ではスーパーの安売りでは目玉にされ、鼻をかんで使い捨てられる。
今では紙を「紙」として売っても、利益なんてほとんど出ない。
本を買うときにはその上の「コンテンツ」にお金を払っていて、
買う側にとっては紙や印刷代なんて、むしろコストでしかない。
だから中間コストを下げて、安く出来る可能性を持った電子書籍に期待を持つわけだ。


ディスプレイというデバイスも、価格破壊から逃れることはできないし、
「テレビ」「モニター」から、どれだけ用途を広げられるかを課題にしなければいけない時期に来ていると思う。
ペラペラのディスプレイが一枚500円にまで下がれば、40枚2万円
制御部分や通信は置いておいて、このぐらいなら十分電子書籍として買う価値があるだろう。
一枚100円なら、100ページ分でも1万円
この辺になると、何ページ分を持ちはこぶべきかが価格ではなく個人の好みで決める時代になる。
(40pならマンガ1話サイズ、200pなら標準文庫サイズ、1000pなら京極夏彦対応モデル、とか)

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

そうやって積極的にデバイスの値段を下げて、市場を広げることが重要なのではないか。


以上、二日にわたって新しいデバイスを考えた。
3D表示器は安くデバイスを作れるシャープ・韓国・台湾勢
電子ペーパーによる電子書籍は、ソニーサムスンが一番近いところにいるんじゃなかろうか。
デバイスは廉価に向かうのなら、コンテンツ産業はどうなるのか。
テレビ番組はどうするべきかといったコンテンツ論を語れるほど詳しくはない。
だが、技術面から見て電子書籍はこうしたら良いのでは?と思う部分はある。
新しいディスプレイで、どんなコンテンツ産業を作ればいいのかという案を、明日は書いてみたい。


続き
・リンク → 新ディスプレイ考・4:みんなが嬉しい電子書籍