ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

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スプーン一杯分、売ってください

スプーン一杯で驚きの白さに」
花王の洗剤、アタックの往年の大ヒットコピー。

アタック 4901301281463

アタック 4901301281463

今の若い人が見ると何のことか分からないだろうが、
当時の洗剤は粉末の重い、大きな箱で、大量の洗剤をぶち込む必要があった。
このコピーが指しているのは二点、
一点目はスプーン一杯という(当時としては)少量で洗濯できる」
もう一点は「きちんとキレイになりますよ」ということ。


洗剤はそれ以後少量で使えるのが当たり前になったという意味で、
この広告は市場の転換点を示すと言われるが、もう一点の「キレイになる」というのも
かなり重要だと思う。

洗剤の「キレイにする」ものじゃない

どのメーカーの洗剤でも、用量を守って普通に洗濯すればまぁキレイになる。
だから日本において、普通に洗濯できることは洗剤のPRにはならない。

  • 「泥だらけでもこんなにキレイに」
  • 「臭いまで取れる」
  • 「部屋干しでも臭くならない」
  • 「使う水の量を半減」
  • 「柔軟剤入りで柔らかい」
  • 「いい匂い付き」


よくもまぁ、と思うが最初のPR以外は全て洗濯の能力のPRとは違う。
洗浄能力の差別化ではないから、顧客には新しい価値観を提示しなければいけないわけで、
そのパワーは商品開発だけでなく、広告宣伝に多大な労力とコストを費やすことになる。

オーバースペック市場で発生する二極化

基本能力が顧客の要求仕様を超えてしまった商品は日本では溢れかえっていて、
そうでない商品を探す方がむしろ難しい。


こういった市場では企業のベクトルは二極化する。
高品質(高付加価値)市場と、低価格市場だ。
上のPRポイントは新しい付加価値をつけて高く売る、あるいは価格を維持する高付加価値戦略の例。
逆に低価格戦略ではPR品や100円ショップなど向けの「洗剤」とだけ書かれた物がそれにあたる。

100円ショップにiPhoneケースが売ってる! / yto


市場の原理から言うとこの二方向は仕方ない戦略なんだけど、
企画担当と一消費者としての感覚が違うなぁ、という事も常々感じる。

二極化に抗えるか

この二方向性の問題は何か。
それは単純に「キレイに落ちる洗剤」という商品が欲しいのに、そういう商品こそ売れないこと。


最低限洗濯できる、という程度の洗剤が100円ショップで売られていて、
臭いが付いたり、部屋干しOKだったりする洗剤が300円だとする。
そこで「洗浄力が強い」という洗剤が170円で出せたとすると売れるか?
多分、売れない。
こういう商品は販促が凄く難しい。
やっぱりマーケティング的には特定領域での一点突破か、新機能があるほうが売りやすい。

コーヒー一杯を売って欲しい

なんでこんな事を思ったかというと、会社で飲むコーヒーのことを考えていたから。
いや、脈絡が無いんですがちょっと聞いて下さい。


コーヒーにもインスタントからドリップから色々手に入れる方法はあるが、
会社で入れるので選択肢はそれなりに限られる。
スタバで買っても良いんだが、毎日何杯もスタバって訳にもいかないし、
安く上げようとインスタントにすると、粉っぽくてどうにも受け付けない。

Starbucks / marcopako 

さて、困った。


ここで気がついたんだが、インスタントやドリップでもいろんな種類があるし、グレードがある。
ただ、試してみるにはどうも容量が大きすぎる。
キーコーヒー インスタント プレミアムブレンド 100gクライス カフェ ジャパン エクスプレスコーヒー 250gAGF ブレンディ インスタントコーヒースティック 2g×100P※色々なインスタントコーヒー。どれもでかい
実は去年もインスタントを買ってみたが、一杯飲んで全く受け付けず、会社の人にあげてしまった。
お試しができればあんな後悔はしなくて済んだのに。

新商品案、お試しパック

ということで上の話に繋がる。
洗剤とコーヒーの共通点は、パックが大きいこと。
(一セット3袋の高級ドリップ式の奴とかは毎日会社で飲めないので除外)
だからなかなかお試しもできず、結局いつもの物のリピートになるか、
新商品や「いまだけお試し大容量」みたいなのをとりあえず買うことになる。


「お試し大容量」ではなく、本当のお試しがあれば良いのに。

お試しパックの市場性・採算性

販促における広告費は、家庭用品や嗜好品では大きなウェイトを占める。
化粧品では、原価よりも広告費によって最終製品の価格が左右されるほどらしい。
資生堂 ツバキ シャンプー 220mlTSUBAKI ダメージケアトリートメント 200g※化粧品ほど単価が高くないシャンプーなどでは、広告宣伝費が特に費用に大きく影響する


小分けパックによるサンプル品という販促は猫のエサではよくやられる。
キャラットミックス かつお仕立ての味わいブレンド 3kg
これは猫が食事の嗜好にものすごくうるさく、エサを変えると全く食べなくなることがあるためだ。
このため新しいエサに変えるハードルが非常に高く、無料サンプルでのテストが販促に重要となる。
ちなみにうちの猫は本当にどの種類のエサでも食べます。

お試しパックの「新機能」

使ってみないと、食べてみないと分からないものはたくさんある。
店頭でのお試しでもいいが、お試しパックにしたら客の立場としてはとてもありがたい。

カレーうどん試食 / norio_nomura

もちろん会社としては小分けにすると内容物よりパッケージや物流コストの方が大きくなって、全然儲からない。
でも、大きな広告を打つよりも安上がりなので、販促策としてやってくれれば
客としては買ってみたい、アリなんじゃないだろうか。


その際のポイントは、ただ小分けにするだけじゃなく「良さの確認方法を伝える」ということ。
買うことより、むしろ良さを伝えることにポイントがあるのだから、一番良さを分かってもらえる
確認方法をいかに伝えるかに注力すれば良い。


例えばコーヒーなら、ここまで言ってみたらどうだろう。

この袋一杯を、180ccのお湯にいれ、ミルクを50cc入れます。
180cc、50ccはそれぞれこの袋の中の線までです。
お湯は沸騰直後のお湯をこの袋に180cc入れて、それをカップに移すとちょうど良い温度になります。
・・・(略)

Coffee Club / anthony_p_c

インスタントも最良の条件で入れればおいしいのかもしれない。
それなら、お試しパックでは最良の条件を簡単に実現できる方法を伝えることを最重視すれば良い。

あったらいいな、こんなセット

実際に、家庭用品でパックが大きい物はすべからくお試しできたら良いのにと思う。
具体的には、例えばスギ薬局等で2000円以上買ったらお試しを一回分つける販促策
それぐらい買う人ならお店のリピーターである可能性が高いので
お店としてもメリットがあるし、会社としては効果的な販促策になる。


とはいえこの話は新しいネタでも何でも無くて、化粧品は店頭でのおためしが当たり前だし、
紅茶販売のルピシアが売れているのは、扱っている紅茶の質が高いからとか、種類が多いからだけでは無く、
紅茶好きを増やすためにその蘊蓄や飲み方の教育面に力を注いでいるため。

Lupicia: Tea Store / sumocat666

・リンク → 世界の紅茶・緑茶専門店 ルピシア - LUPICIA Fresh Tea
実際、ルピシアでは「お試し100種類セット」なる商品もある。さすが。
そもそも紅茶が100種類もあるなんて知らんかったよ。


化粧品や紅茶は難しい商品だから教育が必要だけど、洗剤やコーヒーはみんな分かるでしょ?
そう思うのはメーカーのエゴかもしれない。
ということで、インスタントコーヒーのお試しセット、必ず買うんで作って下さい!
ローコスト品からハイエンド品までパックになってれば、その中から中〜中の上あたりを次はパックで買うはず。
そういう次へのストーリーを考えれば、フルラインナップを持っている会社がお試しパックを作るのは、
経営効率から考えてもなかなか良い話だと思うんだけど。


これじゃでかいんだよなぁ・・・
既にあったら教えてください。