ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

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次に来るのは「物流革命」じゃないか

20世紀末からの「情報革命」は21世紀になっても続いているが、
次に必要なのは「物流革命」だと思っている。

21世紀に必要な事

情報の流れはこの20年で文字通り革命的に進歩し、
友人がどこにいるかを気にせずコンタクトが取れるようになった。
仕事も東京の同僚と連携して、ファイルをやりとりしながら一緒に作業できるし、
外出先で撮った写真をそのまま世界に公開できる。

facebook / Sean MacEntee


だが、物の流れは驚くほど進化していない
もちろん物流網は進化し、以前に比べれば早く・安くものを運べるようになった。
だがその実体は、高度なIT技術による情報のやりとりの他はほとんどの部分を人手と鉄道とトラック輸送に頼っている。
つまり働く人が頑張っているからこの輸送システムが成り立っている。

/ okano

今の仕組みの問題

今の仕組みでは物流網の発達がそのまま公害に繋がるし、
遠くにいる人とのやりとりには時間も、お金もかかるという本質的な所は変わっていない。
実際、日本のCO2排出量を見てみても

製造部分で省エネが進んでいるのに対して、物流と家庭部門ではCO2排出量が増加している
家庭部門は電化が進んだため。
物流部門は単純な輸送量の増加によるもの。


21世紀のこれからの物流には、ネットが革命を起こしたような抜本的な流通革命が必要だと思う。
具体的な案は無いが、20年前なら「外でネットに接続できて、分からないことはすぐに調べられる」
なんて言っても意味が分からなかっただろうし、
「どこにいても世界中の誰にでも電話ができる」なんて夢物語だっただろう。

American Flag / mootown

次の世代の物流には、それぐらいの革新的アイデアがあれば良いと思う。
方向性はこの二つ。

  1. 革新的な時間での移動
  2. 必要なところで製造する
革新的な時間での移動

分かりやすいイメージは「テレポート」
(スタートレックでは「転送(Transporter)」。この訳はなかなか秀逸だと思う)

Star Trek - Enterprise D Transporter / tkksummers

必要な場所に瞬時に移動する。
簡単に言うと、物の移動においての地域格差を無くす。
田舎にするデメリットを極端に減らすことで、優雅に自然の中で生活できるようになる。
今それができていないとは言わないが、やはり都心から離れてもできる事業は限られる。
人のやりとりはともかくとして、物のやりとりは翌日と言わず、
瞬時に届けられる技術ができればいろんな人の考え方や、生活スタイルを変えることになる。

必要なところで製造する

製造技術が上がり、装置も小型になり、数百万で物が作れるようになったとする。
そうすると、わざわざ工場で作って配送するよりも、材料だけ送って
使う場所で製品化すれば、廃棄ロスも在庫リスクも無くなる。

必要なところで製造した事業

必要なところでの製造、という考え方は新しい物ではなく、既に実績がある。
DPEがその典型。
街中の「写真屋」の中でも、特に現像だけを行うDPEショップ」は、DPE装置の発明によってできた商売。
それまで「写真屋」というのは、現像を自分で行わず、メーカーのラボで現像するのが一般的だった。

郵便配達 / chidorian

それがDPE装置により、店頭で現像・印刷ができるようになり小さなショップが大量発生した。
そしてデジカメの普及により、「家で印刷(あるいは印刷しない)」が一般的になり現在は衰退しつつある。
ラボ → 店頭 → 家庭
と、写真は印刷する場所が、より自分の身近になっている業態と言える。


大量生産品なら、極端な話、部品と設計図があればある程度の商品は作れる。
それなら、データだけを購入し、手元で作成する仕組みができれば面白い。

手元で印刷する

例えばこういう実験をした人がいる。
「学級新聞のような原稿を作って、セブンイレブンで印刷する。
 セブンイレブンの印刷コードを公開すれば、日本全国で印刷できるんじゃ無いか?」
・リンク → セブンイレブンのネットプリントを駆使して学級通信みたいなものを作ったらそこそこ盛り上がった−Together


これは面白い。
ユーザー側にプリンタが無くても、手ぶらで40円持ってコンビニに行けば、このデータを手に入れられる。

Seven-Eleven in an old-fashioned building / pelican

配送すると印刷代+80円(普通郵便)、さらに何日もかかるところを、データの輸送だけにすると即時で手に入り、安くできる。
これが次世代の物流じゃ無いか。


これを応用した方が良いと思う物に「カタログ」「商品説明資料」がある。
営業マンはとにかくカタログを持ち歩かなければいけない。

the hardware salesman / mugley

郵便でも、生命保険でも、家庭教師でも、宗教でも、クリーニングでも、リフォームでも何でも良い。
訪問して説明するには、カタログや資料が必須になる。
これは「パソコンがあれば良いじゃない」にはならない。
やっぱり、手元に紙資料を置いて帰られたら読むが、何も置かずに帰られたらもうその場で忘れると思う。
このため営業マンの荷物はとにかく重くなる。


資料はどれを使うか分からないので全部持つ必要があるが、
このお客様の後で、次のお客様でも使うかもしれないから、持って行くのが一部では足りない。
そうすると、実際には一人に訪問するための3倍も、5倍も資料を持ち歩かなければいけない。
これが営業マンの現実。


これがどこでも気軽に印刷できるのならどうなるか。
一件訪問したら、使った分だけの資料をコンビニで打ち出せば良い。

signet @ MYJ/RJOM / Hyougushi

それなら持ち歩く資料は常に1セット。
営業所にも在庫を持たなくて良いので、紙の資料はとにかく少なくできる。

反対意見に対する反論

常識で考えれば、印刷の方が安くて高品質だ。
でも、品質は上げられるかもしれないし、価格だって、現在の仕組みでは大量の廃棄が発生している
印刷所から会社に納品された資料は、各地の営業所なり拠点に配布される。
それを各営業マンがバラバラと持って行くので、配送時には何重にも輸送コストが発生している。
また、商品の終了や内容の更新時には古いカタログを廃棄しなければいけない
しかしこれだけカタログをみんながバラバラに持っていると、一人数十部の廃棄でも全体では大きな数になる。
こういったロスが発生しないことを考えると、個別にオンデマンドで印刷する方が安い可能性は十分ある。
しかも、新規配布や更新時にはデータの更新が簡単に、間違いなくできる。


仕組みの問題もある。
「全国どこにでも印刷できる環境をどうやって作るんだ」と。
でも、コンビニはどこにでもあるし、複合機だってまず置いてある。
それを対応させるんだがら一から仕組みを作ることを考えると、コストは大分安い。
また、複数のコンビニを越えた仕組み作り、という事に関しては
銀行決済が実現している。

Seven Eleven - ATM / St〓fan

直接お金のやりとりを行う銀行決済に比べれば、データのやりとりだけで
お金はコンビニに入る仕組みの、この印刷システムの方がどれだけ導入しやすく、コンビニにも受け入れられやすい物か。


情報革命は色々な作業の無駄を無くした。
例えば出張時に電車と宿を簡単に取れるようになったこと、移動経路や時間を簡単に調べられるようになったこと一つを取ってもそう。
物流革命も、同様に無駄を無くし便利になるものでなければいけない。
まずは印刷で無駄を省いて便利にする仕組みを考えたが、もっと革新的に、物を移動する手段ができれば、
そこにはインターネット並の、あるいはそれ以上の市場があるのは間違いない。
それは何だろう、超伝導リニアか、テレポートか。
でも何となく、ヤマトや佐川やDHLが無ければ回らないような社会の仕組み、というのは50年も経てば変わっている気がしてならない。