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ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

ボードゲーム制作を行う「ペンとサイコロ」のブログです。公式サイトはこちら→http://penanddice.webcrow.jp/

今誕生しつつある衰退産業:メガネ市場

わかりやすさ

時計を対象に、高級市場の生き残り方を取り上げた。
ではこの考えを展開できる、今縮小しつつある市場は何か。

眼鏡市場

例えばメガネ。
メガネの市場は近年縮小傾向。

・リンク → 愛眼社決算資料(2011年3月期)
眼鏡の市場の衰退には色々な理由が考えられる。
どれも原因だし、どれか一つが原因というわけでもない。

  • コンタクトレンズ人口の増加による眼鏡人口の減少
    • 1997年使い捨てコンタクト発売による普及拡大


Contact Lens / bfishadow

  • 安価な中国品の増加による単価下落
  • レーシック手術などの普及による視力の改善
    • 年間50万件程度(最新データ不明)
  • 製品の品質向上による長寿命化
眼鏡は「衰退しつつある」産業

眼鏡は「見えにくい」という用途を満たすために作られた。

Glasses / 0xMatheus

しかしその用途を満たす方法は、「眼鏡しかない」時代から
「メガネかコンタクトか手術から選ぶ」という時代になり、全体のパイが縮小した。
そして同時に高額品の市場が、低価格品への市場へと移行している。


メガネの市場は、まだ本質的な世代交代は迎えていない。
その意味で衰退「しつつある」市場と言える。
現在の低価格メガネは「中国製フレーム+韓国産レンズ」が主流らしい。
原産国と作業コストの徹底的な圧縮により、原価を1/4程度に圧縮しているとのこと。
JINS!の発表資料などより)


ファッションでユニクロが業界を席巻した「SPA方式」をメガネに導入することで低価格化。
最初にこの方式で参入したZoffがアパレル系だったこととも筋が通る。

Zoff / [cipher]

ただユニクロ形式は「大量生産」「安価な労働力」に支えられているため、
委託先の人件費がコストに直結するし、市場が小さくなれば生産コストが上がってしまう。
またこの改革が本質である「見えること」に全く直結していないこともポイント。
低価格品では視力に不安があるため、「ちゃんとした」お店でというニーズが残る。

眼鏡市場の未来予想図

眼鏡市場の未来には、いくつかの方向性が残っている。
単純な低価格化を脇にやって、生き残る秘策を考える。

高機能化

メガネの徹底的な高機能化。
メガネは「よく見える」事を目指しているが、低価格品はそこは一切改善していない。
むしろ曲率の高いレンズは作れないため、「目が悪い人は高価な日本製レンズが必要」という二分化が起きている。
つまり、高機能化とは「誰でもよく見えるレンズ」を作ること
一つのレンズで誰でもよく見えるなら、その大量生産でコストを下げられる可能性が出てくる。
正に時計市場でのクォーツの出現と同じことが起こりうる。
これが「メガネの機能」として目指す姿だと思う。


そんな物はできない、と思うかもしれないが、形さえ気にしなければ
すでに「液体レンズ」がそれに近いことができる。

液体レンズの詳細は省くが、簡単に言うとその名の通り「(ガラスではなく)液体でできたレンズ」
水と油を入れて、電圧をかけることでレンズ形状が変化する。
特徴は「電気でレンズの調整ができる」ということ。
既に一部の携帯電話や工業用品で採用されており、
「小型」「高速」「静音」でフォーカスを合わせられる事が売りになっている。


この液体レンズを一般のメガネにも使用できないか?
液体レンズの問題点はいくつかあるが、例えば「円形になる」こと。
メガネに使うと、古き良き「牛乳瓶の底」の様なメガネになってしまう。

Carrie Donovan Specs / shannonpatrick17

また電圧制御なので電池の問題もある。
だが、綿密な測定を行って作る上、一度作ると調整の難しいガラス・プラスチックレンズと違い、液体レンズはいつでも微調整ができる。
とりあえず使ってみて、気分が悪くなれば微調整を入れることもできる。
この「長時間試せる」という機能はメガネの使い方を大きく変えられる。
実際に誰にでも使える特性を生かし、液体レンズを発展途上国の貧しい人に配ろうというプロジェクトもある。

高付加価値化

時計のスウォッチが「高機能化」なら、併せて「高付加価値化」を推進すると良い。
既にメガネの高付加価値化は始まっていて、鯖江市」がブランド設立に動き始めている。
この動きをもっと加速し、数十万と言わず数百万のメガネを目指す。


時計の方向性を見ると、ユーザーの納得する付加価値の方向性が見えてくる。
それは「機能」だ。


高額な時計には、ものすごい機能が搭載されている。

6498 movement macro / GuySie

重力の影響をキャンセルする機構、永久カレンダー、鐘を鳴らす、等々。
どれも「時計」というベースを持ちつつ、それを(不自然なまでに)拡張した機能といえる。
時計がここまで機能を上げるのに高価格化するのは、それが完全な「メカ」で行っているから。
それを時計業界では「100年経っても安心して使ってもらえるには、機械式でなければいけない」という理由付けを行っている。
実際には機械式でも部品を作れる会社が無ければメンテナンスできないわけで、
どこまで詭弁かはある意味「言った者勝ち」なんだが、それを「格好良さ」に昇格させると高付加価値にたどり着ける。


メガネも同じ方向を目指せばいい。
ポイントは「高額な部品を意味もなく使わないこと」
1カラットの宝石をちりばめれば原価が上がるのは当たり前。

それではタダの色物になってしまい、ブランドにはならない。
では、カーボン素材を象嵌技術で複雑に組み込んだフレームは、肌になじんで疲れない、というならどうだろう。
価格は100万だとする。
「そこまでして必要か?」
という声は無視する。
「そこまで必要な人のために、赤字になるかもしれないけど最高級の製品に挑戦しました」
というと付いてくるお客様がいるかもしれない。
そうして「最高品質、最高価格」を作っていく。
メガネも全部「メカ」にこだわる必要はない。
とにかく最高品質を作ること、その方向性にしっかりと筋が通っていればよい。

メガネは生き残る

結局の所、メガネが無くなることは考えにくいし、
このまま低価格化が進んでも、子育てする立場から言えばまぁ、それはそれでありがたい。
(うちの娘も、あと10年もすれば目が悪くなってメガネのお世話になると思うので)
ただ、思考実験として考えると日本のメガネ産業は、まだやれることがたくさんある気がしてならない。


日本人はまじめなので、最高級品を作っても常識的な値付けをすると言われる。
一品物では高いものもあるが、量産品ではどうしても安くしてしまう。
メガネは、その基準をひっくり返せるよい商材だと思う。
日本の技術は一カ所に集中し、低価格攻勢を受けている。
技術による対抗はもちろんだが、高付加価値化した上で、その市場を一定の大きさで成り立たせる。
これが成功すれば、将来の日本の素晴らしい試金石になる。
鯖江市の皆さん、是非挑戦してください!

CIMG3905 / tecking