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ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

ボードゲーム制作を行う「ペンとサイコロ」のブログです。公式サイトはこちら→http://penanddice.webcrow.jp/

トレンドは「追う」のでは無く、「待つ」もの

秋元康氏のお言葉。テレビで言っていた話だが、雑誌で同じ事を言っていたのでそちらから文字起こし。

DIME (ダイム) 2010年 08月号

DIME (ダイム) 2010年 08月号

「結果を出し続けるプロデューサー・秋元康による「深く刺さる『濃いコンテンツ』創造術」

「何かがヒットすると、みんな後を追いかけようとします。二番煎じを狙っているわけではないのでしょうが、同じような所に正解があるような気がするのです。
しかし、流行はまるで、”もぐら叩き”のゲームのように、全く違う場所から頭を出すのです。それを追いかけるのは困難です。
逆に、ブームとは関係なく同じことを続けていると、それがブームになったりします。壊れて止まっている時計でも1日のうち2回は正確な時を示すことができます。
何かアイデアが浮かんだとき、まわりを見回す必要などないのです。いまの時代のニーズは? なんて考え始めたら、ヒットは作れません。これはヒット間違いなし!という思い込みが一番重要なのです。もう古いかな? なんて不安に思う必要もありません。(後略)」
DIME 2010年の特集記事「ヒットの法則大研究」より

流行・トレンドはどんな世界でも同じ事

工場の中では効率やコストが最重視されるが、そんな世界にも「トレンド」はある。
トレンドに乗っからなければ、いくら良い商品でも売れない。
元が狭い業界だから、売れないときは本当にびっくりするぐらい売れない。


例えば「日本テクノ」という会社がある。
・リンク → 省エネ・スマートメーター・電気料金削減の日本テクノ


今回の震災で「節電」がブームになり、電力会社からも工場に節電要請が出されたことで工場でも節電が一気にトレンドになった。
このため、電力削減によるコストダウン提案を行う、この会社の業績が伸びているらしい。
(日経スペシャル「ガイアの夜明け」より)

今だから節電、なのか?

ところが冷静に考えると、節電によるコスト削減は今まででもニーズはあったし、
節電要請があろうがなかろうが、節電によるコスト削減のメリットはある。
(今回は節電による「罰金」の恐れがあったので、従来より節電のメリットが大きくなったとは言える。)

デジタルサイネージで電力使用状況表示して「節電にご協力ください」って何か変じゃね? / ysishikawa


でも、今までは結構そのハードルが高かったのだろうと思う。
工場の人達は忙しいし、彼らは自分たちの製品に対してのプロであって、電力のプロじゃない。
「この装置を50万で購入すれば、年間100万円のコストダウンになります」
といった話は毎日売り込みを受けているので、
自分の得意なジャンルでなければ、一から勉強して購入という所まではなかなか難しい。


これをひっくり返すのが「トレンド」

Google Trends / @boetter

電力不足なら「省エネ」が盛り上がるし、「安全」が重視されるなら「安全装置」の話を聞いてくれるようになる。
何より、工場では担当者個人では物を買えないので、上司を説得して話を通さなければいけない。
よく分からない新技術について、上司を説得するのは難しいが、「省エネが大事ですから」ということなら
話は聞いてくれるし、承認も取りやすい。
こう考えると、数字がすべての工場でも、やっぱりトレンドとか方向性が大事だと分かる。

待ち続ける力

ではそのトレンドに乗っていない商品はどうしたら良いか。
秋元康氏のいう事は本質を突いていると思う。
いざその流れが来たときに走り出しても、モノでも情報でも、開発に1年・2年は最低でもかかる。
結局は流れの来ないうちから、そのジャンルに着目して、じっと待ち続けた会社が一番強い。

Waiting / rgourley

巨大企業は「作れ」

業界を牛耳るような巨大企業なら、そのトレンド自体を作ってしまえばいい。
業界団体や規格を統括して、そのルールに則った仕組みにしてしまえば良い。
そうすれば自社に都合の良い商品が自動的に作られるようになる。
これは本来欧州企業が得意としてきたやり方だが、半導体ではSEMIという規格がその役目を果たしている。
例えば原子力なら東芝・日立連合がそのルール作りを請け負うという方法がある。

大手は「追え」

トレンドを作る・統括するほどでは無い企業なら、基本的にはトレンドを「追いかける」しかない。
トレンドの始まりは、業界にいれば結構分かる。
それを「いつ」追いかけるかの感度が企業によって違う。
効率重視ならトレンドが広まってからになるし、先行利益を取りたければトレンドの最初の段階で入ることになる。


個人的には、追いかけて入るのなら先行者をとにかく早く手に入れて、長い期間をかけて解析するべきだと思う。
後追いとか、規格があればそれに則って「とりあえず出す」のは民生でも工業用でもロクなことにならない。
どの段階で参入するかは企業の個性だが、その完成度は参入時期にかかわらず重要。
完成度が低ければどの段階で、どんな戦略をとっても上手くいくはずが無い。

Mockey Mouse / Wm Jas

後追いで出す限りは、先行品に完全に勝てるというポイントが必須になる。

中小は「粘れ」

では「待ち続ける」ことができる会社とは?
それは大手以外の会社だと思う。
アーティストやファッションでも、トレンドが古いトレンドのリバイバルの場合がある。
しかし、そのリバイバルで最初にヒットを飛ばすのは聞いたことも無い会社や歌手で、彼らは「ブーム」ではなく
最初から「70年代のこのスタイルに憧れて10年やってきました」みたいなスタンスだったりする。

Viva Las Vegas, and Viva wedgies! / Herkie

こんな形で待ち続けて、歯を食いしばって花が咲くのを待てるのは、中小でしかできない。


もちろん、その「花」が咲く保証はどこにも無い。(保証があるなら大手もやってくる)
そんな「訳の分からんもの」に全力投球できる夢のある若者や、アツい社長がやりたいようにできるのが中小の強みと言える。

大手はやるな!

逆に、こういう話に、通常、大手が手を出して上手くいくことはない。
手を出すなら、徹底的に「バクチ覚悟」「長期戦」でやる必要がある。
たとえば「完全子会社で一社最大5000万の資本金で20社作る」とか。
子会社はもう、完全独立させてしまう。
19社潰れても、一社生き残ればOKという覚悟でないと、なかなかトレンドを待つ戦略は取れない。
実際にレコード会社や芸能プロダクションはそういった考え方で、
よく分からない「売れない歌手」「売れない芸人」を超人気歌手・芸人が養う構造にいなっている。
それぞれの歌手・芸人を会社と考えれば、どれだけ偏った事業構成に敢えてしているかが分かる。


こういった新技術の育て方で一番悪いのは、大手が自社に取り込んでしまうこと。
本当に今見えているトレンドを短期で追うために買収するのは良いが、
「なんかこの辺が面白そうだ」ぐらいで買収すると持てあまして潰すしか無くなる。
大手に吸収されると、社員はともかく技術は存続できると思ってしまうが、そんなことは無い。
いくら独自性があっても、大手は大手なりの収益(事業規模)がないと捨てざるを得ない。
中小で無ければ生き残れない市場、というのもある。

たとえば今回の省エネ。
記憶では確か松下精工(→松下エコシステム→パナソニック)が15年ほど前にやっていなかったか?

Panasonic / DanieleCivello

省エネは日本ではなんども盛り上がっていて、
「電力供給量を100%ではなく、90%程度に精密に制御することで電力を抑制する」
というシステムを提案していたのが、松下だった気がする。
これも結局「電力を100%未満にするなんて不安だ」というユーザーの声で、上手くいかなかったと聞いている。
しかし照明なんかは90%でも全く問題ないわけで、今なら受け入れられていた可能性がある。
でも、大手で10年も15年も成長しない、売れない事業を持っておけない。
当然、そんな事業は消えていて、今ではどこの会社がやっていたのか、調べても分からなかった。


トレンドを待つのは覚悟がいるし、毎日の「メシの種」も当然必要なわけで、これを続けるのは難しい。
大体が、自分の会社の技術や商品に独自性があると考えている会社の方が少ない訳で、
これをやれるという時点で、そうとうな覚悟をもった会社だと言える。
第一、効率が悪い。
マーケティングの王道から言えば、こんなやり方は失敗する、死地に赴く戦略としか言えない。


ただ、それでもやりたいという人には、頑張って、突き詰めて欲しいとは思う。
実例が、このブログ
マーケティングとか言いながら、PVアップのタイトルもWEBサービス紹介もやってない。
むしろターゲットの狭い「わかりやすさ」という新しい軸で一円にもならないブログを毎日書いている。
でも、日本語でそんな内容をこの分量で毎日更新しているサイトは無い、と思う。
その独自性だけで突っ走れば、誰かが見つけて面白がってくれないか、というマスを狙うマーケティングとは正反対の、「じっと待つ戦略」
実際、これを始めてからの反響もあるわけですよ。
中小・個人ならそのぐらい変なことをやって欲しいな、と思う。


このブログでも「できる方法を考える」ことが取り上げられていたが、
このブログ自身が自分なりの「できる方法」だと思ってやっている。
・リンク → できない理由を指摘する人よりできる方法を考える人が成功する理由