ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

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水を売る:ミネラルウォーター市場分析

飲料の販売統計は面白くて、その時代を世相をシンプルに切り出してくれる。
イケイケドンドンの高度成長期にはガッツリした味のジュース飲料が受けて、
バブル以降時代が落ち着いて、健康志向になると味の薄いお茶が増える。

ミネラルウォーター市場の推移

そんな中売り上げを伸ばし続けているのが「水」
ミネラルウォーターが日本で発売されたのはなんと1880年(明治13年!)
最初のミネラルウォーターは「山城炭酸水」だそう。
・リンク → 「日本ミネラルウォーター史」


とはいえ、市販・家庭用というジャンルでは

  • 1982年 ペリエの輸入販売開始

Perrier(ペリエ) 750ml×12本 [正規輸入品]

Perrier(ペリエ) 750ml×12本 [正規輸入品]

アサヒ 六甲のおいしい水 2000ml×6本

アサヒ 六甲のおいしい水 2000ml×6本

このあたりがスタートと考えて良いかと思う。
ウィルキンソンはどうなんだ、という意見はあるが、ここではちょっと置いておこう)


ミネラルウォーターが普及し始めたのは先にも書いたとおり1980年代から。

そこから急速に普及が進み、06年にはスポーツ飲料果実飲料(ジュース)を抜き、
10年には緑茶飲料と10%程度の差まで肉薄している。
・リンク → 清涼飲料品目別生産量推移(1991年〜2010年)|ソフトドリンク統計|のみもの情報館


ちなみにこのトレンド、日本だけかと思ったら意外にそうでもないらしい。

  • ミネラルウォーターが世界的に普及しはじめたのは1970年代から
  • 特に1990年代に入ってからの伸びが著しく、5年間で年率20%以上の伸びを示している
  • ミネラルウォーターの世界5大市場はアメリカ・ドイツ・フランス・イタリア・スペイン(※ただしデータは1995年)

・リンク → 世界的なミネラルウォーター市場の拡大とその国際規格化 - 福澤尚子

なるほど、海外からの水がよく目に入ると思ったら、市場の拡大で海外でも新商品が出ているのか。

水道水とミネラルウォーター、どっちがより「安全・安心」?

よく勘違いされるのが「水道水よりミネラルウォーターの方がおいしい・品質がいい」というもの。
特に安全性に関して言うと、ミネラルウォーターよりも水道水の方が何倍も基準は厳しい。


これは各所で言われているので、全部を取り上げるとキリが無い。
そこで代表的な物をいくつか。
・リンク → 東京都水道局

  • ミネラルウォーターの水質検査項目は「食品衛生法」に基づく 18項目
  • 水道水の検査項目は「水質基準に関する省令」に基づく 50項目
    • 横浜市の場合は、このほか自主基準にも基づく 計121項目


・リンク → 横浜市水道局

検査項目は、いくつかの自治体を見てみたが、どこも100種類を超える検査を実施している。
ちなみに、項目だけでなくその検査基準も大きく異なる。
鉛、ヒ素亜鉛、ホウ素5倍も水道水の方が厳しい基準値であり、フッ素、マンガンでも、2.5〜4倍も水道水が厳しい。


この件に関しては、テレビでも取り上げられているのでさすがに最近は認知が上がっているらしい。
参考まで、テレビ番組の文字起こしをされた記事が丁寧なのでリンクを貼っておく。(2005年の記事)
・リンク → 世界一の誤解 市民のための環境学ガイド

なぜこれほど違うのか?

水道水の方が安全・安心なのは間違いないし、安い。
なぜこんな事が起きるのか?
それは単純で、「ミネラルウォーターが嗜好品だから」


以前、「ナチュラルミネラル『おいしい』ウォーター」というCMがあったが、
(メーカーなど失念、資料見つからず。申し訳ない)
「ナチュラルミネラル」「岩を掘ったそのまま」「おいしい」「主観」なので、
要は「裏山を掘って出た水です。オレは旨いと思います」ということしか謳っていない。
安全性も機能性も謳っていないので、「客が良いと思うから買っている」という嗜好品の売り方で間違いない。

ミネラルウォーターの原価?

適当に見繕ったコイツで原価面を考えてみる。

1.5l×12本1,852円
1本あたり154円。大体1lあたり100円というところか。
ミネラルウォーターの水自身の原価は、採掘費用を含めても10円/lもしないといわれる。
ボトル費用が高いと言っても、どう見積もっても10〜20円がいいところ。
となると、小売りが30%取るとしても、1l 100円の水の50%が製造元の利益になる。
そんなおいしい商売があるか?
あるわけがない。
この50%の大半が「輸送費」
つまり水を運ぶ燃料代と人件費が価格の半分を占めていると考えられる。
こりゃ確かに贅沢品だ。

機能水って何だ?

もう一つ、よく分からないものに「機能水」というのがある。

機能水は、「人為的な処理によって再現性のある有用な機能を獲得した水溶液の中で、
処理と機能に関して科学的根拠が明らかにされたもの、及び明らかにされようとしているもの」
と定義(日本機能水学会)されています。
・リンク → 機能水とは|財団法人機能水研究振興財団

なんだこりゃ?
「財団法人」「学会」が同じページにあるし、「学会」と称するものの共催も過去の記事も
自分の所の関連団体ばっかりじゃねぇか。

pHが6.5以下の電解水を総称して酸性電解水と言います。
・リンク → 機能水とは|財団法人機能水研究振興財団

一発目からこれか。
ただの酸性の水じゃねぇか。
このあとに「=次亜塩素酸です」って言い切ってるけど、
純水に二酸化炭素を混ぜて作った炭酸は、塩素を含まないから彼らの言う
「酸性電解水だけど、「次亜塩素酸」じゃないからね。
う〜ん、化学専攻でも何でも無い素人に5秒で論破される「学会」って・・・
あ〜、とんでもないモン踏んでしまった。


もう、この時点で相手にする気も失せたんですが・・・
とにかく「機能水」「酸素水」「××水」胡散臭いと。

Magical Trevor / phil_g

※自分の中の「胡散臭い」イメージ。今日のベストな一枚
まぁ、嗜好品だし、医療効果を歌わない限り「言ったモン勝ち」なことは事実なので、止められません。
こういう方法で金を稼ごうという考え方は大嫌いなのですが、
似非科学を叩くのが目的のブログではないのでこれ以上触れないでおきます。
(もう十分触れたか?)


とにかく言いたいのは、ミネラルウォーターは高い上に、みんなが思うほど安全でも安心でもないということ。
むしろ水道水の方がよほど安全・安心な上にとにかく「安い」ということ。

Glass of Water / Greg Riegler Photography

もちろん各地の水道局は「水道水は良いよ」キャンペーンを謳っているんだけど、
水道局が地域限定のためになかなか成功していない。
そんな水道局の視点から、水道水の良さを訴える方法を考えてみる。