ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

ボードゲーム・3Dプリント作品・3DCG制作を行う「ペンとサイコロ」のブログです。公式サイトはこちら→http://penanddice.webcrow.jp/

ではHMDはどうしたらいいのか 【解決策】

結局ではHMDはどうしたら成功するの?
もう自分の中でも5年以上も考えてきて、散々「失敗する」という結論しか得られなかったこの件について、
なんとか突破口を考える。

やってはいけない「モノありき」の商品企画

まず大前提として、こういう「モノありき」の商品企画は邪道だし、本当はやっちゃいけない
「作っちゃったけど、どこで売れるかなぁ」
は企画・マーケティングでは基本的にNG。
そういう流れで作られた商品は、まず上手くいかない。

もちろん例外もある。
3M社のポストイット「くっつかない接着剤」という失敗品だった。
それを何とか売れないか?と考えた研究者の出した結論は「しおり(栞)」
そこで、よく文房具を使う、会社秘書達に大量に配った。
しかし調査の結果、彼女らがそれを「付箋(メモ)」として使われていることが分かり、「この用途なら売れる」と商品化。
現在の大ヒットとなった。

機能分析

スカウター(的なモノ)の機能を一言で言うと「メガネ式ディスプレイ」
ディスプレイとして考えると、その他のディスプレイ機器との大きな違いは
「両手がふさがっていないこと」
そこで、「両手がふさがるがディスプレイの情報を確認したい」というシチュエーションを考える。

ディスプレイは動きながらは見られない

ここで最初に思いつくのは「歩きながら」「スポーツしながら」ディスプレイを見るということだが、
人間は情報の80%を視覚に頼っていると言われるので、移動中に視点をずらすのは非常に危険。
ウォークマンは移動しながらの音楽試聴を提案して大ヒットしたが、単純に聴覚と視覚を同列にしてはいけない。

両手がふさがっているが見たい物

例えばAirScouterで提案している用途は二つ。
一つは作業中の指示書の表示

これは良いと思う。
手はふさがっていても、動く訳ではないので作業書や図面を確認したいと思われるから。
二つ目ピッキング(部品の取り出し)作業

これはNG。
特に移動中に地図を確認するのは、狭い倉庫内の通路では危険。

結局は特定用途の専用機

HMDは実は既にプラントの保全用や、戦闘機の操作ディスプレイでは実用化されている。
どちらも両手を離せない危険環境で、大事な情報を読み取るため。
日常ではこういったシチュエーションは無いので、「両手を離せるディスプレイ」というスタンスは非常に狭い用途を攻めることになる。
もちろんニッチマーケットは存在するが、そこから一般の市場に広がるイメージは持てない。

まず目にかけるところから

ドラゴンボールスカウター画面を改めて確認すると、画面表示は基本は文字(+カーソル)。

AirScouterにしろ、その他HMDにしろ、動画を見せたがるが、「本当に必要か?」という原点に戻る必要がある。

まずメガネ以外を目にかける習慣を

まず目にかけるモノの機能を拡張する。
今は目にかける物というとメガネだけ。この発想を広げるところから始めなければいけない。
これを今、まさに行っているのがメガネ会社のJINS

・リンク → JINS
現在のメガネには二つの市場しかない。

  1. 視力を改善する
  2. まぶしさを抑える(サングラス)

JINS「目の悪くない人にもメガネを」という商品を考えており、「メガネ」「サングラス」のほかに
「機能性アイウェアというカテゴリをトップに設けている。

たとえばこんなもの

  • 目に悪い紫外線〜青波長をカットする「パソコン作業用メガネ」
  • 加湿機能がある「ドライアイ対策メガネ」(Coming Soon)

まずはこういった形で「メガネの裾野」を広げると、よりハイエンドなHMDを受け入れる土壌へと繋がる。

必須・単機能で切り込む

次にディスプレイ的な機能を考えると、情報量の多い動画は日常生活では不要だし、危険。
シンプルで、必須の情報を伝える物である必要がある。
必須の情報とは?

  • 携帯のアンテナ状態?
  • 方角?
  • メールの着信?
  • 時間?

ちなみに全部時計に搭載されている機能。
それでもいいが、もっと必要性の高い、「視界を奪ってでも伝える必要がある」情報は何か。
例えばこんなもの

  • 熱中症の危険度
    • 一定時間直射日光下にいると、視界がブラックアウトする。強制的に日陰に入らせる。(水をかけてもOK)


Emma Sharkey spends afternoon at public pool / KOMUnews

つまりHMDのあるべき形とは?

つまりHMDは文字通り「頭に装着するディスプレイ」ではダメで、「高機能なメガネ」なら可能性があるかもしれない。
実際、オリンパスは05年頃は様々なセンサーを連携した複雑なシステムを開発していたが、
最近は「情報をシンプルに、とにかく軽量化」と方針転換した。
(08年 11万画素 → 10年 7.68万画素)


SONYが先日発表したような「高画質・3D・5.1Chサラウンド」みたいなのはマニア向けには有りだが、
これは明らかにメインストリームではない。


JINSの提案するいろんなメガネをみんなが付けるようになって、
それが高機能化して情報を出すようになって、
そのあとディスプレイ的なものの用途提案が出てくるかもしれない。
個人的には、その時の機能の一つは電子書籍端末」「メール表示端末」だと思っている。
日本人にとっては長くて無駄な通勤時間。
この間の時間の取り合いは、今の携帯ゲーム機の主戦場になっている。


しかし、「本当の満員電車」では、すべての娯楽は遮断される。

IMGP2363 / Wry2010

こんな時でも、HMDなら本が読める
映画も見られる。
あらかじめ満員電車に向かって電子書籍用の端末を目にかけるのは多分受け入れられないが、
「機能付きメガネをかけるのが当たり前」の日常になれば、電子書籍を読むことの抵抗は低いと思う。
これは携帯電話の普及と携帯ゲームの浸透と同じ土俵で語れると思う。


そんな時代は何年後か。
やはりメガネの普及から組み立てても、短く見ても5年以上先かな。
さて、それまで頑張って開発してくれる会社はどこか・・・


このネタの昨日までの記事
・リンク → 初めてのスカウター選び 【例示】
・リンク → AirScouterの理想と現実 【問題提起】