ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

ボードゲーム・3Dプリント作品・3DCG制作を行う「ペンとサイコロ」のブログです。公式サイトはこちら→http://penanddice.webcrow.jp/

3:一歩引いて考える

棚卸しが終われば業界の状況、他社の状況、自社の状況並べて一歩引いた目で、公平に、フラットに見る。
これを環状を挟まずに、どれだけフラットに見られるかが企画のキモになる。
特定の部署・会社・業界に長く居ると、どうしても
「創業事業の人員を割く訳にはいかない」とか
「業界ではこれを重視しているから手を引く訳にはいかない」とか考えてしまう。
これを一歩引いて、本当に必要なものは何か、自分の強みは何かを考えられるかが重要。
もちろんその結果を持って、「それでもここにこだわりたい」という結論を出すのは構わない。
ただ、感情と数字は別にしなければいけない。
考える際には、まず数字で考える。これが重要。

業界にいると、分かっていても止まれない

業界にいると、意味の無いスペック競争をしていることが良くある。
例えば少し前だと液晶の「視野角」
従来のSN液晶→TN→STN→IPS液晶・VA液晶と液晶の「視野角」競争時代があった。
視野角や輝度は液晶の基本スペックなので重視されるが、あるラインを越えるともはや素人には区別が付かなくなる。
この時期にある開発者の言葉が印象的だった。
「もうね、携帯の液晶なんて視野角も輝度も分からないよ。
 しかも綺麗さを気にする女子高生は、携帯買ってすぐに視野角を狭めるのぞき見防止のシールを貼るんだよ。
 この視野角競争って、もう意味があるのかね?」
開発者はこの時点で視野角競争に意味が無いことを知っている。
ところがある会社が「視野角 135°を実現」とか言うと、「じゃあうちは140°を目指せ」となってしまう。
こうして消費者不在の競争が激化する。

LCD Gooey 2 / RBerteig

実際には気づいていても止まれない事情はもちろんある。
例えば視野角戦争が終わると価格競争になるから、ギリギリまで競争を続けたいとか。
でもさっさと大規模化に突っ走って価格競争に突っ込んだ会社が市場を制しているのが現実。

こうなっているのは、以前ならパソコンのクロック周波数競争、ケータイ電話の薄型競争。
今なら何だろう。
スマートフォンタブレット)の薄型・クロック周波数競争かな。
タッチパネル嫌いだから個人的にはタッチパネル以外の機種に変えたいんだが。

気付いていない独自性

棚卸しした結果を見て、自分の特徴をどう生かせばよいかを考える。
自分、自社のメリット(強み)は商品のスペックや、ブランドだけじゃない。
例えば商品のラインナップや顧客情報、業者とのパイプなんかも立派なメリットになる。
例えばAmazonやミスミは圧倒的なラインナップと短納期が特徴という意味で共通している。
今は安価もメリットだが、安くなくても「探すのが面倒だしアマゾンで(ミスミで)」という客を取り込んで成長してきた。
逆に町の電気屋さんは安くはないが、一人暮らしのおばあちゃんの家に行って電球一個から交換できるという強みがある。
手間がかかって仕方ないが、この地味なやり方がPanasonicの大型テレビの売り上げを支えている。
Panasonicの場合、この圧倒的な系列店(「パナソニックのお店」)の数が国内での差別化のポイントになっている。

Panasonic 3D TV Demo - Consumer Electronics Show 2010 - CES - Las Vegas NV / David Berkowitz

特徴は長所でもあり、短所でもある

自分の特徴が棚卸しできたら、そのうちどれを生かすかを考える。
特徴はそれ自体は長所でも短所でもない。
実際に、長所と短所は同じ特徴の裏返しでもある。


例えばアマゾンもミスミも、他品種を扱うと言うことは大量の在庫を持たざるを得ない。
楽天は在庫を持つのを嫌がり、個人商店のとりまとめを行う「商店形式」をメインとし、
大規模な在庫・宅配センターを持とうとしなかった。
(最近ここにようやく手をつけ始めた)
Panasonicのお店も大手量販店には価格攻勢をかけられ、店長の高齢化も進んで厳しいところも多い。
特徴を生かせば「長所」だし、生かせなければ「短所」になる。
アマゾンを見て「あんな大規模なシステムを構築できない」というなら、小さいことを生かしたビジネスを考えればいい。
良いところがあれば、弱いところが必ずある。


例えばマクドナルドは「効率の良い出店と、アメリカの大規模方式での安く・うまい牛肉」というのが特徴。
色んな攻め方があるが、「100%アメリカ産ビーフ」というコンセプトを逆手に取ったのがモスバーガー
「100%国産の牛・豚合い挽き肉」というコンセプトの「とびきりハンバーガー」マクドナルドの対抗軸としてはこれ以上ない見事な対抗策。
マクドナルドを見て「こんな安く出されたらどうしようもない」ではなく、「コンセプトで肉の出自をうたっているなら、こちらの戦略の対抗策を打てない」「100%アメリカ産ビーフ」マクドナルドの「足枷」と捉える。
この発想の逆転こそが戦略に沿った企画だと思う。
モスのこの「とびきり(国産・高級)」シリーズに対抗しているのがマクドナルドの「アメリカ(米国産・高級)」という戦略。
マクドナルドは相手と同じ戦略を安く取り込んで叩きつぶす、というマーケティングの王道中の王道で対抗していて、これも見ていて面白い。

Mos Burger / Gilgongo