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ダイソンの掃除機・2:売りのポイントの分析

昨日に引き続き、ダイソンの掃除機について。
ダイソンの掃除機の能力、というか機能面をもう少し掘り下げて分析してみる。

ダイソンの掃除機の仕組みと売り

ダイソンが売りにしているのはサイクロン式という原理。
実はサイクロン式は新しい技術でもなんでもなくて、工場に行ったらサイクロン式の分別機・集塵機はそこら辺に突っ立っている。
ダイソンはこれを小型化して、家庭用の掃除機に搭載した。
ダイソンが日本でヒットしたときの他社との違いと、受け入れられた理由は実際には次の二点だと思う。

  1. 吸い込んだゴミが見える
  2. すぐにゴミを捨てられる


Dyson Vacuum - holy. crap. / D'Arcy Norman


まずダイソンの掃除機と従来の日本メーカの掃除機(フィルタ式)の一番の違いは、方式の前に「吸い込んだゴミが見えるケース」
これは「吸った結果が分かるので、掃除したことを実感しやすい」というのが一つ。
しかしもう一つ大事な理由があって、
「どれだけ溜まったか分かるから、捨てる動機になる」
「ゴミがあるからこれ以上吸えないと、ユーザが納得できる」
サイクロンだろうが、従来のフィルタ式だろうが、ゴミを吸ったら捨てなきゃならない。
従来の掃除機はこれが面倒だった。

  1. 今どれだけ溜まっているか分からない。
  2. 捨てる作業が面倒。

ダイソンの掃除機はまずゴミを「見える」ようにした。
そして、簡単にゴミを捨てられるケース構造にした。
これが大きい。
日本の敗因はここにある。

なぜサイクロン式だったのか

サイクロン式は風の力(遠心力)でホコリと風を分離する方式。
上のポイントを押さえると、その特徴は「吸引力が変わらない」事では無く「フィルタを使わないこと」になる。
フィルタが無いことで、こんなメリットが生まれる

  • ゴミの溜まる部分が見える
  • 交換部品が減る

ダイソンが変えた掃除のルール

ダイソンの掃除機は、実は普通の掃除機より面倒。
それは、基本的に掃除するたびにゴミを捨てなければいけない。
今まで、日本の掃除機はゴミをパックに封じるため、そこまで高い頻度でゴミを捨てていなかった。
ゴミを捨てないと吸引力が落ちるが、何せ元の吸引力がオーバースペックなので多少吸引力が落ちても使用上は問題なく使えてしまう。
この「無駄」が日本の家庭で「常識」になっていた。


ダイソンはこのルールを変えた。
「ゴミを吸ったら、当然捨てる物」というルールを、ダイソンの掃除機のゴミ収集ケースは訴える。
この結果、ユーザは掃除機をかけるたびにゴミを捨てるという「新しい習慣」を植え付けられる。
これをメーカが「メンテナンスしないと性能が落ちますよ」と訴えると「面倒な機械」になって売れない。
ダイソンはそれを商品自体が訴える。
「汚いから掃除しないとな」
と思わせるケースのデザイン。
これがダイソンの成功の大きな要因だと思う。

掃除機への不満と、日本メーカの失敗

日本メーカの失敗はこの「メンテナンス性」という不満をすくい取れなかったことにある。
既存のフィルタ式掃除機ではどうしてもメンテナンスは必要になる。
しかし、価格競争の激しい日本の市場で、新しい方式を検討してもそれを回収できる見込みが立たない。
こうして狭い部分の差別化になる市場に対して、新しい方式がほぼ「メンテナンス性」という一点突破で日本市場を切り開いたと言える。


ただ個人的には日本メーカがフィルタ式にこだわっていた理由もよく分からない。
フィルタ式は必ずフィルタ交換が必要になる。
フィルタ交換は当然お金が必要なので、その交換品はメーカーにとってはとてもおいしい市場になる。
極端な話、メンテナンス品が純正品で無ければならない、という場合は本体は無料でも元が取れる物が多い。
例えばカミソリ、プリンター、コピー機、空気清浄機、等々。

有名どころではキヤノンのプリンター。「血液よりも高いインク」といわれる。
ちなみにこの方式で最初に大成功したのがカミソリのジレット社なので、マーケティングでは「ジレットモデル」といわれる。

Gilette / anafreitas

ところは掃除機のフィルタに関しては、各社共通で使用できるサードパーティーの安価なフィルタがあり、これが結構な市場を占めている。
またフィルタの形状や大きさは機種間で統一されているため、この部分での差別化もできていない。
そう考えるとフィルタでの儲けは実際にはあまりでていない気がするんだがどうなんだろう。

我が家の掃除機

で、我が家の掃除機は?
我が家はミドリ電化で買った三洋電機の掃除機。
いくらか覚えてないけどエントリーモデルなので1.5万円前後だと思う。
これ、個人的には満足している。


市場背景としてはダイソンの発売後、三洋電機の白物はかなり困窮していた時期。
このモデルも三洋電機では無くて、三洋とミドリ電化のダブルブランド扱い。
つまり実質OEMみたいな物。
この時期の三洋電機は大手感電メーカとのタイアップ品をたくさん作っていた。
まぁ、儲からないわな、そりゃ。


このモデルは先端ブラシとゴミを集めるカップ部分がオリジナル。
オリジナルだけあって先端ブラシが最初に壊れかけて、今も怪しい動きなんだが良いのはカップ部分。
カップがプラスチックのケースになっていて、フィルタ代わりにティッシュペーパーを入れるようになっている。

ティッシュなので安いし、毎回ゴミを捨てるので
「吸引力が変わらない」
日本の普通の掃除機なので吸引力も耐久性も軽さも音も、すべてが及第点。
でもまぁ、こんなものがこんな値段で満足されたら、メーカは儲からんよなぁ。
今ももういうモデルがあるのかは知らないが、総合バランスでいえばこれはものすごく良いと思う。