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ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

ボードゲーム制作を行う「ペンとサイコロ」のブログです。公式サイトはこちら→http://penanddice.webcrow.jp/

ダイソンの掃除機・1:日本市場で売れた理由と、日本メーカの敗因

「吸引力の変わらない、ただひとつの掃除機」
はダイソンの掃除機のキャッチコピー。
日本で成功した海外製家電としては、かなり希有な例じゃないか。

Dyson / tnarik


ではこれが何故成功したのか。
商品がよいとか宣伝がよいとか色々あるんだろうけど、戦略面に目を向けて切り取ってみる。
その視点は結構他にも流用できるものなので。

日本市場の「常識」と、ダイソンの違い

掃除機の市場は長らく「吸引力」「静かさ」が二大スペックだった。
「排気が」とか「センサーが」とか細かい差別化市場になったのはその後。
例えば「この掃除機は排気も少なく、軽くて高性能だけど吸引力が低く、うるさいです」
という商品は、
「あぁ、それは吸引力が低くてうるさいんだから、まず低価格機ね」とか、
いくら良くても、吸引力が低くてうるさいと、日本じゃ売れないよ」となってしまう。


ダイソンはここをひっくり返した。
「吸引力が『変わらない』ただ一つの掃除機」
という言葉には、「吸引力が高い」という言葉はない。
(ちなみに細かくいうと吸引力は全く低下しない訳では無い。ここは誇張した表現)
また、購入者から共通していわれるのは「うるさい」ということ。
つまり日本の市場の「常識」では、これは「吸引力が高くなくて、うるさい、売れないはずの商品」ということ。
ダイソンが凄いのは、この常識外れな商品を、ヒットさせたということ。

ダイソン以前

日本の掃除機は元々レベルが高くて、海外勢に厳しい。
それは日本の掃除機は日本の住居環境に適した設計思想になっているから。
日本は「素足」の文化で、「家が狭い」
素足で歩くので、土足文化の国より、掃除機をかけた後の「きれいさ」にこだわる。
逆に土足文化なら精密さよりゴミを吸い込む「量」がポイントになる。
(このため細かいホコリで詰まらず、吸引力の強いパワー重視の掃除機になる)
そして日本は家が狭いので、巨大な機械は置けないし、動かせない。
また家が狭い上に隣家も近いので、「大きな音がたてられない」
この結果、日本の掃除機は精密な掃除のための「ノズル」や、小型で音が静かなモータの開発に特に優れることになった。

オーバースペックによる「スペック対決」の結末

これだけ発達した日本の掃除機が何故ダイソンにあっさり足下を掬われたのか。
それは日本の家電メーカ間の「意味のないスペック競争」の影響は少なからずあると思う。
吸引力や静かさは掃除機の基本性能だが、日本企業の高い技術力は消費者の必要レベルを超えることが往々にしてある。
しかし、会社は他社と差別化しないと価格競争になる。
その時に「スペック比較」に入ると、意味のないスペック競争に突入してしまう。
テレビの「視野角競争」「大画面競争」「倍速/4倍速競争」、携帯電話の「全部付き競争」、数えればきりがない。


掃除機でいえば、吸引力はもはや安価な掃除機でも十分満たしている。
実際ダイソンは単純な吸引力勝負なら決して上位機種ではない。
でも、それで十分顧客は満足してしまう。
その「及第点の吸引力」を分かっていなかった、というより価格競争を恐れて、
その及第点を無視し続けたことが、ダイソンの成功の前にあった、日本メーカの問題点。


では実際にダイソンの掃除機のメリットは何だったのか?
もう少し掘り下げて考えてみる。
続きは長くなったので、明日。