ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

ボードゲーム・3Dプリント作品・3DCG制作を行う「ペンとサイコロ」のブログです。公式サイトはこちら→http://penanddice.webcrow.jp/

本屋で野菜を売れ!

昔〜し、「トマトの本」っていう本があったの、だれか知らない?
昔も昔、多分15年とか20年前だったと思うんだけど、
今の分冊百科ディアゴスティーニとかそういうやつ)程度の大きさで、
「本」といいつつ中身は土と種のセット。
本を置いてそのまま水をかけたら、ミニトマトができますよ、って感じだったと思う。
確か、二種類あったんだよなぁ・・・トマトと・・・なんだっけ。
本の名前も、時期も、すべてうろ覚えだけど目新しさがあって覚えてる。

“It's difficult to think anything but pleasant thoughts while eating a homegrown tomato.” - Project 366 2008 - July 26, 2008 ~ / turtlemom4bacon

意外な場所で、意外な商品を売る

で、この前ツタヤに行ったら今度は「無煙タバコセット」が売られていた。
明らかにタバコなんだけど、本の形態で販売されていた。
タバコの販売には規制があったはずけど、たとえば禁煙パイプには規制はない。
だから禁煙ムードが続くと小売りとしては販売チャンネルが広がって市場の拡大になる。
無煙タバコはどっちなのかよく分からないけど、とにかく本屋でいるという行為自体が目新しいのは確かだわ。

No Smoking Sign / Mykl Roventine


このトマトの本と、無煙タバコ。
扱っている物は全く違うけど、販売戦略としては同じ。
単に「本屋」というだけでなく、共通点をまとめると次の三点になる。

  • 本では無いが、「本の形態」で販売されている
  • 本屋で関係ない物を置くというチャンネルに成功しているので、競合が居ない
  • 「本家」の商品からしたら邪道、オモチャ

競合がいないところで、オモチャを売る

「本屋でトマト」という意外性は、販売戦略としてはとても良い。
そして、その商品が売れ筋商品でないのも良い。


例えばタバコの売れ筋商品を一種類だけ本屋に置くことを考えてみよう。
マイルドセブンライトのカートンを扱い始めました」
これでは目新しさがないし、顧客からはこんな不満が出る。

  • 「なんでマイセンがないの?」
  • 「カートンじゃなくて1個で欲しいんだけど」
  • 「ソフトじゃなくてボックスで」(←タバコを吸ったことがない人間からするとこの差が未だに分からない)

なんだか不満ばかりで満足感がないし、「いつもの場所で買う」人が多いので場所を取る割に売れない。
しかも既存の販売店からは不満が来る。
本屋は本しか扱わないので気にすることは少ないが、扱う品種が多いところは
「隣の商店とけんかになるので、隣の扱い商品は置かない」
という場合もある。
これは礼儀もあるが、近くで同じ商品を置くと価格競争をやらざるを得ないという問題もある。

Anime Expo 2010 - LA - fast food icons / popculturegeek.com


ここで目新しい、でも売れ筋ではない商品を置くと、営業的には「ついで買い」が促進できる。
これがタバコの既存販売窓口では競合商品になるが、本屋の場合は既存商品とバッティングしないので、純粋な上乗せになる。
また買わない人も「こんな物も扱うんだ」という印象を与えられるので会社の提案力を見せる手段にもなる。
なかなかいいことづくめ。

本屋でなくても・・・

本屋はその強力な卸(業界用語で「取次」)体制で、ルートに乗せられればどんな商品でも全国で扱える。
スーパーやコンビニでも「ついで買い戦略」はやられているが、
こちらは「ついで商品」を置く棚が小さいので、置く商品はガムやお菓子がメインになる。
その点、本屋は店全体が「ついで買い」で、サイズがある程度大きいので、形式が「本」なら置く場所の融通は行いやすい。
もともと雑多な物を置く雑貨屋・インテリアショップでは話題にならないが、
基本的「本」を扱うという固定観念がある本屋があつかうということでインパクトが出ているのだと思う。

IMG_8554 / schmuela


ところでその町の本屋は減少傾向。
「何でもある」というAmazonが競合になった時点で、雑多な物を置く町の小売り形態は難しくなっているのかもしれない。
でも実際に物を見て、だらだら見る中で面白い物を見つける楽しさもある。
でも物を置くスペースはそんなに無い。

本当の意味での「雑貨」屋の提案

であれば、いっそのこと「売れ筋を置かない」雑貨屋って成り立たないのかな?
店全体が目新しい物だらけ。
もちろん、それではすぐに飽きるので、店をコンテナにして、店ごと定期的に引っ越ししてしまう。
10店なら10個のコンテナを用意して、ローテーションすれば。
それぞれのコンテナは個別に仕入れをする。
「目新しいお店は、最初はいいが長続きしない」
というのなら、最初から目新しい部分だけを繰り返すシステムにすればいい。
行商ではなく、場所は固定なので「あそこに行けば面白い物がある」というスポットになればいいかなと思ったんだけど。
意外に初期投資は安くできると思うんだけど、どうかな。