ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

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震災と営業と品種の絞り込み

震災以降の生産を回復させるため、生産品数を減らすことで対応している会社が増えているらしい。
分かりやすいところでは先日もちょっと話題にしたペットボトルのキャップ。
白一色にすることで生産数量を1〜2割程度増やせるらしい。
他にもビールやハムで生産品数を半分程度に抑える会社があるというニュースがあった。
なぜ品数を減らすと生産が増えるかというと、生産ラインの品種切り替え時の「段取り替え」が減るため。
特に食品では段取り換えの際に「洗浄」が必要な工程も多く、この効果が大きいと思われる。

Seagate's clean room / Robert Scoble


面白いのは品数を減らしたところで売り上げに与える影響は1〜2割程度ということ。
いわゆる「2:8の法則(売り上げの8割を2割の品種が占める)」が起こっているので、
品数を絞り込んだところで大きく売り上げには直結しないという。
なんかマーケティングの教科書の基礎みたいな話をしているが、
逆にこんな基礎的な絞り込みを今までできていなかったと言うことに驚きを感じる。

日本の会社の特徴

日本は一つの商品に対してメーカ数が多いとはよく言われるが、品種も多い。
今回の震災はあくまできっかけで、絞り込みが進むことで効率化すれば良いことだと思う。


心理学でも、人間の満足度と選択肢についての調査がある。
ある商品について、それを選択・購入する際の選択肢と満足度の相関について。
もし選択肢が一つなら、満足度は低い。
これは共産主義配給制での満足度が低いと言うこと。
満足度が一番高くなるのは5〜10個程度。
選択肢が多くなりすぎると
「実はもっと良い選択があったのではないか?」
と思って満足度が低下してしまうらしい。
ネットになって、いろんな会社から商品を買えるようになったことで、
「もっと安い会社があったんじゃないか?」
という不安が今までよりも強く出るようになった。
その不安をついて、「同じ商品を価格だけで比較」という戦略で成功したのが価格.com

Choices / emilio labrador

実際に影響は?

実際、上にも書いたとおり品種を半分にしたところで直近で売り上げに大きな影響は出ない。
しかし企業のブランドとしての「フラッグシップモデル」など、
確かに生産数量や利益が少なくても続けるべき場合がある。
(例えばサントリーならプレミアムモルツ


とはいえそれはあくまで例外で、殆どの品種はこのままフェイドアウトして問題ないと思う。
それを購入していたユーザには不満だろうが、それはあくまで一部のユーザであり、「マニア」でしか無い。
マニアにはマニア向けに高級市場を作っていくのなら良いが、いわゆるNB(ナショナルブランド)で
一般ユーザからマニア層まで全部カバーしようというのが戦略としておかしい。
マニアックなビールが欲しいなら、地ビールメーカに任しておけばいい。

なぜ日本にはこんなに商品数が多いのか?

では実際、なぜこれほど新商品ラッシュになるのか?
それは「新商品を出さないと競合に棚を取られるから」
業種や業態の構造によっても異なるが、日本ではメーカ数が多い過当競争な上、足で稼ぐ「営業」の力が強い。
営業は「新商品」「キャンペーン(値引き)」「リベート(キャッシュバック)」が最強の販促ツールのため、とにかく新商品をほしがる。


こうなる原因の一つは、小売り側がメーカーに対して受け身だからという部分もあると思う。
良い商品を、ずっと置き続ければ無駄に商品数も増えないし、利益も向上する。
ところが実際には棚のスペースをメーカの営業間で取り合い、広い棚に同じ商品がずらっと並んでいたり、
一つのメーカの商品がばらばらと並んでいたりする。
小売りがきちんと、良い品を適切なスペースで置くようになれば、マニアックな新商品群はやがて姿を消していくことになる。

Supermarket / yumtan


これを機に日本のメーカの品数が減れば、それはそれで良いことだと思う。
やたらと新商品を乱発して、メーカの利益率が低くなる。
とにかく営業の数を増やして、中間コストが増大する。
どちらもメーカが一方的に疲弊するだけで、小売りにとっても消費者にとっても喜ばしいことじゃない。
良い物を、適切な価格で作って、メーカも利益をちゃんと出す。
それが理想の姿だと思うんだが。
実際、UFOやカップヌードルを愚直に進化させる日清とか、凄いと思う。