ペンとサイコロ -pen and dice- BLOG

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漫画の未来と編集の役割:ネット時代の創作活動

Jコミが切り開いた「ネットで無料公開の漫画」というビジネススタイル。
これが新作でも同じ方式が使えれば、漫画業界が変わる。
代表の赤松氏は「出版とは競合しない」と否定しているが、他で同様のシステムを確立しても良い訳で、思考実験として考える。

今までの漫画

海外では事情が違う国も多いらしいが、
日本の漫画本は一般的に 雑誌掲載 → 単行本 という順序で出版される。
このため、まず掲載される雑誌の審査をクリアしなけりゃいけないし、そこで一定期間連載されることで単行本になる。
雑誌は掲載誌毎に「色(特色)」ターゲットが当然あるので、そこに沿った内容の漫画がピックアップされる。


今までは掲載誌の無いジャンルの漫画が単行本化するのは難しかったし、
雑誌の都合で打ち切りになる漫画というのも多数あった。
何より漫画は「単行本」を一単位として捉えるのが基本だった。

ネット時代の新しい漫画

ネット時代には、個人がネットで自由に作品を公開できる。
そして、面白くて話題になればネットの作品をまとめて単行本化できてしまう。
実際それができた人というとこんな人達


逆に、単行本化しなくても良い。
ネットで連載し続けて、十分な人気を得られれば単行本化しなくても収益スタイルを確立できる人が出るのかもしれない。
自分は知らないが、もしかしたら既にいるのかもしれない。
Jコミ「単行本化していない読み切りを公開しよう」という話があるが、
「単行本を一単位としない」というのはこの意味では新しい試み。

そんな時代の問題点

雑誌を通さない漫画のスタイルというのは、「自分の好きなように書ける」ということ。
これは良いようでいて、リスクも同時に生じる。


漫画には少年マンガ」「青年マンガ」「少女マンガ」等の緩やかな括りはあるが、実際にはその境界は曖昧。
しっかりと線引きされているのは「成年マンガ(R-18)」という区分のみ。
同じコンテンツ産業の音楽も文学も細かく線引きはされていないが、マンガは映像表現のため、そこはある程度厳密に考えていく必要があると思う。
(適当にすると規制の対象になりやすくなる)

例えば文章なら「身ぐるみはがされた」と一言書いても何にも問題ないが、
これをマンガに直すと矢吹健太朗さん(「ToLoveる!」)が書けばかなりきわどいエロになるし、
大石浩二さん(「いぬまるだしっ」)が書けばギャグにしかならない。


今までは雑誌の「ターゲットと特色」が結果としてそのレーティングを行っていて、
良くも悪くも編集者がそのレーティングの線引きを行っていた。
この出版社の「社内規制」「自主規制」も色々問題はあるけど、100%無くなった方がいいというのも違うと思う。

新たな線引き

映画産業は「R18+」だけでなく、計4段階のレーティングを設けている(日本の場合。国により異なる)
ゲームも同様のレーティングを行うだけで無く、その理由(暴力か、恋愛表現かなど)をアイコン表示している。
このレーティング団体の存在自体が警察の天下り団体だったり等と色々と複雑な政治も絡むが、
そういった団体(窓口)があることで議論を進められるのは事実。


マンガ業界もこういった独自規制ルールを設ければ良いと思う。
ただ、映画・アニメ・ゲームと違いマンガ業界は家庭内手工業の部分がある。
関わる人数が他の業種に比べ圧倒的に少ない(作家一人〜)ので、その中でレーティングをスムーズに行えるシステム作りが重要になる。
そこで重要なのは出版社にとらわれない編集者の共同体。
校正基準のすり合わせをおこなって、「マンガの基準」を明示してそれに従ってレーティングをおこなえるシステムを作ればいいんじゃないかな。


そのレーティング会社を通して同人作家もレーティングすれば新たな収益源にもなる。
「新しい権益だ」と言うかもしれないけど、ある意味レーティング会社は「必要悪」の部分がある。
基準に問題があれば変えていけば良い。
要はノウハウを一カ所に集約して、「日本のマンガとして」全体の力を上げて世界と戦える下地を作れば良いのでは無いか。